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西洋哲学史

せいようてつがくし

バートランド・ラッセル·現代

ラッセルによる西洋哲学の通史

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哲学

この著作について

バートランド・ラッセルが第二次大戦中のアメリカ亡命時代に執筆し、戦後すぐに刊行した哲学史の大著で、ベストセラーとなって著者のノーベル文学賞受賞の一因ともなった作品。

【内容】

本書は、古代ギリシアの自然哲学者から説き起こし、ソクラテスプラトンアリストテレス、ヘレニズム諸学派、教父哲学、スコラ哲学ルネサンスデカルトスピノザライプニッツ大陸合理論ロックバークリーヒュームイギリス経験論ルソー啓蒙思想カントドイツ観念論功利主義ニーチェプラグマティズム、そしてベルクソンデューイまでを一貫したラッセル自身の視点から論じる。各思想家の教説を、政治状況、宗教改革産業革命といった社会的背景と関連づけて描写する構成が特徴である。

【影響と意義】

ラッセル自身が論理実証主義者として明確な価値観を持つため、記述は公平というよりも強い個性を帯びる。プラトンとヘーゲルへの痛烈な批判、ロックやミルへの共感などは有名である。一方で、その偏向ゆえにむしろ哲学史を「論争の現場」として読者に提示し、専門家の無味乾燥な哲学史と一線を画している。

【なぜ今読むか】

哲学史を中立的な教科書ではなく、一流の知性による批評として読む楽しさを教えてくれる。賛同も反論も含めて、自分の哲学観を鍛え上げるための最良の論敵になってくれる、一度は通りたい通史である。

さらに深く

【内容のあらまし】

本書はラッセルが大戦中にアメリカに滞在しバーンズ財団などで行った講義をもとに執筆し、一九四五年にニューヨークで刊行された哲学史で、戦中戦後を通じてベストセラーとなった。冒頭でラッセルは、哲学を社会の真空ではなく、政治・宗教・科学の緊張のなかに置き直すと宣言する。各思想家は、自分の時代の問題に対する一つの応答として描かれる。

第一部「古代哲学」は、ミレトスのタレスから始まる。イオニア自然学、ピタゴラスヘラクレイトスパルメニデスが順に紹介され、それぞれの宇宙論が宗教的・社会的背景とともに位置づけられる。続いてソクラテス、プラトン、アリストテレスへと進むが、ラッセルのプラトン評価は辛辣で、国家の理想国家を全体主義的傾向として批判する。アリストテレスについては、論理学への貢献を認めつつ、自然学の観察不足を指摘する。ヘレニズム期のストア派エピクロス派、懐疑派が、ヘレニズム世界の不安と関連づけて論じられる。

第二部「カトリック哲学」では、初期教父からスコラ哲学までが扱われる。アウグスティヌストマス・アクィナスへの記述は丁寧だが、ラッセル自身の世俗的立場ゆえに、神学的議論への共感は薄い。それでも、イスラーム哲学からの影響、唯名論と実在論の対立、教会と国家の権力関係が一貫して織り込まれ、思想史的見取り図は明快である。

第三部「近代哲学」が本書の中心である。ルネサンスと宗教改革を経て、デカルト、スピノザ、ライプニッツの大陸合理論、ロック、バークリー、ヒュームのイギリス経験論、ルソーと啓蒙思想、カントへと進む。ラッセルはロックを高く評価する一方、ルソーには厳しく、彼を全体主義の遠い祖先と位置づける。カントの批判哲学に対しては、認識論的功績は認めるが、その後継者となるドイツ観念論、特にヘーゲルへの批判は容赦ない。フィヒテシェリング、ヘーゲルは、論理の混乱と政治的反動の温床として描かれる。

最終部では、功利主義のベンサムとミル、ニーチェ、プラグマティズムのジェイムズとデューイ、ベルクソンが論じられ、ラッセル自身の論理実証主義へとつながる流れが暗示される。

読み終えて気づくのは、本書が哲学の通史というより、ラッセルという一個の知性が二千年の哲学者たちと交わした論争の記録だということである。賛同も反論も含めて、自分の哲学観を磨く対話相手になる。

著者

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