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合理主義

ごうりしゅぎ

理性こそが真の知識の源泉とする思想

認識論・存在論デカルト理性

この思想について

感覚経験ではなく理性こそが確実な知識の源泉であるとする認識論。

【生まれた背景】

17世紀の科学革命期、感覚は錯覚を含みうるという問題意識から、数学的方法の確実性をモデルに知識の基礎を理性に求めた。デカルトスピノザライプニッツが代表的思想家。

【主張の内容】

デカルトは方法的懐疑によってすべてを疑い、疑いえぬ唯一の出発点として「コギト・エルゴ・スム(我思う、ゆえに我あり)」に到達した。感覚に依存しない「明晰判明な観念」を真理の基準とし、神の存在証明を経て外界の実在を保証した。生得観念(経験以前に心に備わる観念)の存在を主張する。スピノザは幾何学的方法で倫理学を構築し、ライプニッツはモナド論と予定調和を説いた。数学的・演繹的推論の確実性を哲学にも求める姿勢が特徴。

【日常での例】

「感情ではなく論理的に考えれば正しい結論に至る」という信念は合理主義的。

【批判と限界】

経験主義者から生得観念の根拠が問われ、カントによる総合が試みられた。

さらに深く

【思想の深層】

合理主義の核心は、確実な知識の源泉を感覚ではなく理性に求めることにある。デカルトは感覚が欺くことを示し、理性的に疑いえない「我思う、ゆえに我あり(コギト・エルゴ・スム)」を出発点として知識を再建した。合理主義者は「生得観念(本有観念)」の存在を主張する。人間は経験以前から論理・数学・神の観念などを理性の中に持っているとする立場だ。スピノザは幾何学的方法(定義・公理・命題・証明)で倫理学を構築し、感情に支配された「人間の隷属」から理性による自由を目指した。ライプニッツはすべてが予定調和した「モナド」の体系として世界を把握し、微積分法も独自に発見した。合理主義者に共通するのは、感覚的な個別経験より普遍的な理性的原理を上位に置く点である。

【歴史的展開】

デカルト(フランス)・スピノザ(オランダ)・ライプニッツ(ドイツ)の大陸合理主義は、ロックバークリーヒュームの英国経験主義との対立構図を形成した。カントはこの対立を「コペルニクス的転回」によって止揚し、理性の能動的な構成と感性の受容的な素材を統合した批判哲学を確立した。20世紀には言語分析哲学がデカルト的な意識の直接的確実性を批判した(ライルの「機械の中の幽霊」批判など)。チョムスキーは普遍文法を提唱し、人間が言語を習得できるのは生得的な言語能力があるからだとする合理主義的な言語理論を展開した。

【現代社会との接点】

合理主義の伝統は現代の数学・論理学・コンピューターサイエンスの哲学的基礎として生きている。デカルト的な「明晰判明な規則による演繹」はアルゴリズムの論理に通じ、記号論理学(ライプニッツが先駆)は計算機科学の理論的基盤となった。AI研究における「記号主義(シンボリックAI)」、すなわち知識を記号と規則として表現し推論するアプローチは合理主義的な発想の技術的な実現といえる。一方、現代の認知科学は身体と環境に埋め込まれた知性を強調し、純粋な理性の自律性というデカルト的な前提に疑問を投げかけている。

【さらに学ぶために】

デカルト方法序説は平易で最良の入門書。スピノザエチカは難解だが、国分功一郎《こくぶんこういちろう》スピノザ 読む人の肖像が入門として優れている。チョムスキーの言語理論については辻幸夫《つじゆきお》編認知言語学への招待で文脈が理解できる。

代表人物

人物デカルト

方法的懐疑により近代合理主義の基礎を確立した

人物スピノザ

幾何学的方法で理性による世界の把握を追求した

人物カント

批判哲学は大陸合理論を批判的に継承

人物ヘーゲル

理性的なものは現実的という合理主義

人物ヒューム

理性主義に対する経験論からの徹底批判

人物ライプニッツ

デカルト・スピノザと並ぶ大陸合理主義の三巨頭として演繹的推論による知識の体系化を追求した

人物パスカル

デカルト的合理主義への批判

人物ロック

生得観念を否定する経験論的立場

人物キルケゴール

ヘーゲル的体系の合理主義を激しく批判

人物プラトン

理性によるイデア認識を重視

人物タレス

神話ではなく理性と自然観察で世界を説明しようとした西洋哲学最初の合理的探究者

人物チョムスキー

デカルト的言語学として合理主義の現代的継承を提唱

人物ドストエフスキー

理性万能主義への反逆

人物ベーコン

演繹的合理論への帰納法の対置

人物ソクラテス

理性的問答による真理探究

人物アリストテレス

論証的学知を重視し中世以降の合理主義に多大な影響

人物ショーペンハウアー

ヘーゲル的合理主義を激しく批判

人物ヴォルテール

理性中心の世界観

人物ガリレオ

自然は数学の言語で書かれている

人物グロティウス

理性に基づく自然法を体系化

人物ルソー

啓蒙的合理主義への異議

人物コペルニクス

数学的・理性的宇宙観の確立

人物アクィナス

信仰と理性の調和を説き理性の役割を擁護

人物ディドロ

理性の光で迷信を打破する啓蒙合理主義

人物本居宣長

理屈(漢意)への反発

人物ニュートン

数学的理性で自然を体系化

人物荀子

礼と学習による理性的人間形成

人物荻生徂徠

古文辞学により古代中国語の原典を合理的に読み解き、形而上学的な「理」より具体的制度設計を重視した

近い思想

対立・緊張関係のある思想

関連する問い

関連する著作

著作方法序説

「我思う、ゆえに我あり」で知られる近代哲学の出発点

著作エチカ

幾何学的方法で神・自然・人間を論じた形而上学の傑作

著作スピノザ 読む人の肖像国分功一郎

国分功一郎がスピノザ哲学を現代的な問いとして読み直す入門書

著作認知言語学への招待辻幸夫

辻幸夫編による認知言語学の概説書。チョムスキーの生成文法との対比から認知言語学を紹介する

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