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正義とは何かを問うプラトン哲学の集大成

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哲学

この著作について

「正義とは何か」という問いから始まり、理想国家の構想、魂のあり方、教育、芸術論にまで広がっていく、プラトンの最大の著作。西洋の政治哲学と倫理学の出発点となる一冊。

【内容】

全10巻。老人ケファロスの家での雑談から始まり、弁論家トラシュマコスが「正義とは強者の利益だ」と言い放つ場面を経て、議論は一気に深まる。個人の魂における正義を解明するために、まず理想の国家が構想される。魂が理性・気概(きがい)・欲望の三つに分かれるのと、国家が統治者・守護者・生産者の三階級に分かれるのを対応させ、そこから「哲学者が王となるべきだ」とする哲人王の思想へ進む。太陽・線分・洞窟の比喩でイデア論が語られ、末尾では死後の魂を描くエルの神話で閉じる。

【影響と意義】

政治哲学・教育哲学のほぼすべての主題を先取りした書であり、後のユートピア文学の原型にもなった。20世紀にはポパー全体主義の源として批判し、ロールズ以降の現代正義論も絶えず本書に立ち返っている。

【なぜ今読むか】

洞窟の比喩に代表される鮮やかな思考実験が、正義・教育・メディア・権力への問いを開いてくれる。対話の形式のおかげで、古典の中でも特に読みやすい。

さらに深く

【内容のあらまし】

第1巻、ソクラテスは港町ペイライエウスでの宴に呼ばれる。老人ケファロスとの何気ない会話から「正義とは何か」という問いが立ち上がり、すぐに弁論家トラシュマコスが乱入してくる。「正義とは強者の利益だ」と切って捨てる彼に、ソクラテスは医者や船長の比喩で応戦する。第2巻ではグラウコンとアデイマントスが「不正な人の方が幸福に見える」というギュゲスの指輪の物語を持ち出し、議論はもっと深い水準へ引き込まれる。

ここでソクラテスは方針を変える。個人の魂のなかの正義は小さくて見えにくいから、まず大きな文字で書かれた国家のなかの正義を読み取ろうと提案するのだ。第3巻から第4巻にかけて、理想国家が構築されていく。生産者・守護者・統治者の三階級、子どもたちへの音楽と体操の教育、詩人の検閲。やがて魂もまた理性・気概・欲望の三部分から成ると示され、各部分がそれぞれの仕事を果たしている状態こそが正義だと結論される。

第5巻に入ると、議論は三つの「波」に襲われる。男女の守護者を同等に扱うこと、家族と私有財産を廃して共同の生活にすること、そして「哲学者が王となるか、王が哲学者となるかしないかぎり、国家に災いは尽きない」という哲人王の提案である。第6巻と第7巻では、哲学者が見つめる対象として善のイデアが語られる。太陽の比喩、線分の比喩、そして洞窟の比喩。鎖につながれて壁の影しか見たことがない囚人が、外に引き出されて光に目を慣らしていく場面は、教育とは魂の向きを変えることだという主張へと結ばれる。

第8巻と第9巻は、理想国家が堕落していく過程を辿る。名誉政、寡頭政、民主政、僭主政の順に魂のあり方も悪化し、僭主の心の醜さが克明に描かれる。第10巻では再び詩人批判が戻り、芸術がイデアから二重に隔たった模倣だと論じられる。最後はエルの神話で締めくくられる。戦死したエルが冥界から戻り、魂たちが次の生を選ぶ場面を語るのだ。正しく生きることは、来世まで含めた長い視点で報われるという余韻を残して全巻が閉じる。

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