フィロソフィーマップ
現代西洋

アンリ・ベルクソン

Henri Bergson

1859年1941年

「持続」と「直観」を説いた生の哲学者

生の哲学持続直観
ベルクソン

この人物について

時間を空間的に分割する科学的思考を批判し、意識の流れとしての「持続」を哲学の中心に据えたフランスの哲学者。ノーベル文学賞を受賞した稀有な哲学者でもある。

【代表的な思想】

■ 持続(デュレ)

時計の時間は空間化された抽象にすぎず、本来の時間は意識の内で途切れることなく流れ続ける質的な「持続」であるとした。過去は消え去るのではなく、記憶として現在に生き続ける。

■ 直観

科学的な知性は対象を分析・分割するが、生命や意識の本質は分割できない。対象の内部に身を置き、その全体を直接的に把握する「直観」こそが哲学固有の方法であるとした。

■ 生の躍動(エラン・ヴィタール)

創造的進化で、進化を機械論でも目的論でもなく、内在する創造的な生命衝動(エラン・ヴィタール)によって説明した。生命は予測不能な新しさを絶えず生み出す創造的過程である。

【特徴的な点】

当時支配的だった実証主義・機械論的世界観に真正面から対抗し、科学では捉えられない意識と生命の質的次元を哲学的に回復しようとした。ドゥルーズが20世紀後半に再評価した。

【現代との接点】

創造性やイノベーションを「予測不能な新しさの出現」として捉える視点、マインドフルネスにおける「今この瞬間の質的体験」への注目は、ベルクソンの持続の哲学と深く共鳴する。

さらに深く

【思想の形成】

アンリ・ベルクソンはパリでポーランド系ユダヤ人の家庭に生まれ、エコール・ノルマル・シュペリユールで哲学と数学の両方に秀でた学生として知られた。当時の主流は実証主義と機械論的自然観であり、カントの時間論やスペンサーの進化論が思考の枠組みを規定していた。ベルクソンはそれらの土壌のなかで、科学的な時間概念と生きられる時間経験とのずれに違和感を抱き続けた。コレージュ・ド・フランスの講義は満員となり、パリの知的サロンの中心人物となった。1927年にはノーベル文学賞を受賞し、哲学者として異例の文学的評価を得た。

【思想的意義】

ベルクソン哲学は、時計が刻む空間化された時間と、意識の内で質的に流れ続ける「持続」を峻別するところから始まる。持続は過去が現在に連続的に浸透する不可分の流れであり、数直線上の瞬間に切り分けた途端に本質を失う。これを直接つかむ方法が「直観」であり、対象の外側から概念で分析するのではなく、対象そのものの内部に身を置く認識様式である。『創造的進化』では進化を機械論でも目的論でもなく、「エラン・ヴィタール(生の躍動)」という内在的な創造力によって説明しようとした。決定論的な自然観から生成の哲学への転換が、その核にあった。

【影響と継承】

ベルクソンの持続概念はプルースト失われた時を求めてに滲み、ホワイトヘッドのプロセス哲学、ジェイムズのプラグマティズムとも響き合った。20世紀中盤の分析哲学構造主義の隆盛期には非科学的として一時忘却されたが、ドゥルーズがベルクソニスム(1966年)で差異と生成の哲学の源泉として再評価し、現代思想の中心に引き戻した。現代の意識研究、身体性の哲学、持続可能性論、時間の現象学にまで影響は及んでおり、生成としての自然という視座は現代のエコロジー思想とも共振している。

【さらに学ぶために】

ベルクソンの文章は哲学書としては異例の明晰さで、時間と自由から読み始めるのがよい。物質と記憶は心身問題への独創的な応答として重要である。ドゥルーズベルクソニスムは再評価の契機となった名解説書。檜垣立哉《ひがきたつや》ベルクソンの哲学は日本語の入門として読みやすい。

主な思想

対立する哲学者

影響を与えた人物

関連する悩み

関連する問い

関連する著作

著作創造的進化

生命を「エラン・ヴィタル」として捉えたベルクソン哲学の頂点

著作時間と自由

純粋持続の概念で時間と意識を根本から捉え直したベルクソン博士論文

著作道徳と宗教の二源泉

開かれた社会と閉じられた社会の対比を打ち立てたベルクソン晩年の主著

著作持続と同時性

アインシュタイン相対性理論への哲学的応答としてのベルクソン時間論

著作物質と記憶

記憶と知覚の関係を脳科学と形而上学で統合したベルクソン第二の大著

著作失われた時を求めてマルセル・プルースト

二十世紀を代表する意識と記憶の大河小説

著作ベルクソンの哲学 生成する実在の肯定檜垣立哉《ひがきたつや》

生成の哲学者として再構成するベルクソン論

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