プラグマティズム
実際の結果と有用性で真理を判断する思想
この思想とは
観念の意味と真理性を実践的結果と有用性で判断するアメリカ発の哲学。
【生まれた背景】
19世紀後半のアメリカで、南北戦争後の確実性への懐疑とダーウィン進化論の衝撃を背景に、パース・ジェイムズ・デューイが発展させた。ヨーロッパ哲学の抽象的形而上学への対抗として生まれた。
【主張の内容】
パースは観念の意味をその実践的帰結によって明確化する「プラグマティズムの格率」を提唱した。ジェイムズは真理を「信念の検証の過程で有用であるもの」と定義し、宗教的信仰にも実践的正当化を認めた。デューイは「道具主義」として知識を問題解決の道具と位置づけ、民主主義と教育を結びつけた。探究の共同体における仮説検証のプロセスを重視する。ローティはプラグマティズムをポスト分析哲学として展開し、真理の対応説を退けた。
【日常での例】
「理屈より実践」「やってみて結果で判断しよう」という実験精神はプラグマティズム的。
【批判と限界】
真理を有用性に還元することへの批判、相対主義への傾斜が指摘される。
さらに深く
【思想の深層】
プラグマティズムの根本的な主張は「思想の意味はその実践的な結果にある」というものだ。パースは「プラグマティズムの格率」として、ある概念の意味は「それを信じることで生じる実践的な違いは何か」によって決まると論じた。実践的な違いを生まない概念の区別は形而上学的な空論にすぎない。ジェームズはこれを「真理の道具主義」に発展させた。真理とは固定した対応関係ではなく、「有用に働く信念」である。信じることで我々の生活に適合し、うまく機能するとき、その信念は真だという立場だ。デューイは「探究(inquiry)」という概念で知識論を再構成した。知識は問題を解決するためのツールであり、科学的方法は問題解決の最善の手続きである。思想は行動を導く「道具(instrument)」である。これがデューイの道具主義である。
【歴史的展開】
プラグマティズムは1870年代にアメリカのケンブリッジで、パース・ジェームズ・ホームズらの「形而上学クラブ」から生まれた。ジェームズが1907年の講演で広く普及させ、デューイがシカゴ・コロンビア大学で教育学・民主主義論と統合して体系化した。20世紀半ばには分析哲学の台頭で影を潜めたが、クワイン(「経験主義の二つのドグマ」1951年)やセラーズが分析哲学内部からプラグマティズム的な批判を展開した。リチャード・ローティは「ネオプラグマティズム」として真理の対応説を批判し、哲学の目的は文化の対話だと論じた(『哲学と自然の鏡』1979年)。
【現代社会との接点】
アメリカの「実用主義」的文化(理論より実践、成果を測定する評価文化)にはプラグマティズムの哲学的影響が反映されている。デューイの教育思想「学ぶことは経験を通じて行われる(learning by doing)」はプロジェクト型学習・問題解決型教育の哲学的根拠となっている。法哲学では「リーガル・プラグマティズム(実用主義的法解釈)」として、法規則よりも判決の実際的結果を重視する立場が存在する。デザイン思考・アジャイル開発の「試作→フィードバック→改善」というサイクルも、プラグマティズム的な知識観と親和的である。
【さらに学ぶために】
ジェームズ『プラグマティズム』(桝田啓三郎訳、岩波文庫)はプラグマティズムの最良の入門書。デューイ『民主主義と教育』(松野安男訳、岩波文庫)は教育と民主主義のプラグマティズム的統合の主著。ローティ『哲学と自然の鏡』は難解だが現代的なプラグマティズムの立場から分析哲学を批判する重要著作。
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