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近代西洋

ジェレミ・ベンサム

1748年1832年

功利主義の創始者、最大多数の最大幸福

功利主義法哲学改革
ベンサム

概要

「最大多数の最大幸福」を掲げ、道徳と法律を合理的に設計しようとしたイギリスの哲学者・法学者。功利主義の創始者として、善悪を「結果がもたらす幸福の総量」で判断する画期的な枠組みを打ち立てた。

【代表的な思想】

■ 功利性の原理

行為の善悪は、それがもたらす快楽と苦痛の総量によって判断されるべきだとした。道徳を神の命令や直観ではなく、計測可能な基準で捉えようとした点が革新的であった。

■ 快楽計算

快楽の強度・持続・確実性・近接性・多産性・純粋性・範囲という七つの基準で、行為の道徳的価値を数値化しようとした。道徳を科学的・合理的に扱おうとする野心的な試み。

■ 法と制度の改革

刑罰は犯罪抑止のために必要最小限であるべきだとし、不必要に残酷な刑罰を批判した。パノプティコン(全展望監視施設)の構想でも知られる。動物の苦痛にも配慮すべきだと述べた先駆者でもある。

【特徴的な点】

カントが動機や義務を重視したのに対し、ベンサムは結果のみを重視した。快楽に質の違いを認めず、量的に等しければ同価値だとした点は、弟子のミルによって批判・修正された。

【現代との接点】

政策評価における費用便益分析や、AIの意思決定アルゴリズムにおける「最適化」の発想は、ベンサムの功利計算の現代版と言える。公共政策を合理的に設計するという理念は今も生きている。

さらに深く

【功利主義の設計者】

ジェレミー・ベンサムは1748年、ロンドンの裕福な弁護士の家に生まれた。神童として知られ、12歳でオックスフォード大学に入学した。法律を学んだが、イギリスの法体系のあまりの非合理性に失望し、法と道徳を合理的な原理から再構築することを生涯の課題とした。膨大な量の草稿を残し、その多くは死後に刊行された。遺言に従い、遺体は自己標本(オート・アイコン)として保存され、現在もロンドン大学ユニヴァーシティ・カレッジに展示されている。

【快楽計算と制度設計】

ベンサムの功利主義は「最大多数の最大幸福」という明快な原理に基づく。行為や法律の善悪は、それが社会全体にもたらす快楽と苦痛の差し引きで決まる。この計算のために快楽の七つの基準(強度・持続・確実性・近接性・多産性・純粋性・範囲)を設定した。この発想は現代の費用便益分析や政策評価に直結している。刑罰論では抑止効果を基準とし、不必要に苛酷な刑罰を退けた。また「苦痛を感じられるかどうか」を道徳的配慮の基準としたことで、動物の権利論の先駆ともなった。

【パノプティコンと影響】

ベンサムは理想的な監獄としてパノプティコン(一望監視施設)を構想した。中央の監視塔から囚人を常に監視できる(あるいは監視されていると思わせる)構造で、少ない人員で効率的に管理できるとした。この構想はフーコーによって近代的な規律権力の象徴として批判的に読み解かれ、監視社会論の重要な参照点となった。弟子のJ・S・ミルは質的功利主義へと発展させ、シジウィックは功利主義を精緻化し、現代の功利主義者ピーター・シンガーはベンサムの伝統を直接受け継いでいる。

【さらに学ぶために】

『道徳および立法の諸原理序説』がベンサムの主著であり、功利主義の基本原理が体系的に論じられている。ミルの『功利主義論』はベンサムへの批判的発展として合わせて読むとよい。

主な思想

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