認
『認知言語学への招待』
にんちげんごがくへのしょうたい
辻幸夫·現代
辻幸夫編による認知言語学の概説書。チョムスキーの生成文法との対比から認知言語学を紹介する
哲学
この著作について
言語学者・辻幸夫《つじゆきお》が編集し、複数の専門家による執筆で組み上げられた、日本語で書かれた認知言語学入門の定番書。
【内容】
全体はまず、チョムスキーの生成文法が前提とする「生得的な普遍文法」の立場と、認知言語学が取る「言語は経験と認知の産物」という立場の対比から説き起こされる。そのうえで、カテゴリー化とプロトタイプ理論、ゲシュタルトと前景・背景、メタファーとメトニミー、イメージ・スキーマ、使用基盤モデル、構文文法、ポライトネスの認知的基礎など、認知言語学の主要概念が各章で整理される。日本語の具体例(助詞、オノマトペ、時制、空間表現)を豊富に用いることで、西洋語中心になりがちな言語学研究を日本語話者の経験に引き戻しているのが特色である。
【影響と意義】
大学の言語学・日本語学の副読本として広く使われており、認知意味論・認知文法の日本での普及に中心的な役割を果たした。ジョージ・レイコフ、ロナルド・ラネカー、エレノア・ロッシュらの仕事を日本の研究者がどのように受容し展開したかを知る手がかりとしても貴重である。
【なぜ今読むか】
大規模言語モデルが「統計」で言葉を扱う時代に、「人間の言葉が経験と身体と文化に根差している」ことを丁寧に辿り直すのは、AIと人間の言語の違いを考える土台となる。現代人の言語感覚を豊かにしてくれる一冊である。