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ロマン主義

理性より感情・想像力・自然を重視する思想・芸術運動

文化・宗教感性自然

この思想とは

理性偏重の啓蒙主義に対抗し、感情・想像力・個性・自然を称揚する思想・芸術運動。

【生まれた背景】

18世紀末〜19世紀前半のヨーロッパで、フランス革命の理想と幻滅、産業革命による自然破壊と人間疎外への反応として勃興した。ルソーの自然回帰思想とシュトゥルム・ウント・ドラング(疾風怒濤)運動が先駆となった。

【主張の内容】

啓蒙主義が普遍的理性と進歩を称えたのに対し、ロマン主義は個人の感情・直観・想像力の創造的力を重視する。自然は機械ではなく生命に満ちた有機体として崇敬され、産業文明に侵される以前の自然との一体感が理想化された。ゲーテ・シラー・ノヴァーリスらドイツ・ロマン派、ワーズワース・コールリッジら英国湖水詩人、ユゴー・ドラクロワらフランス・ロマン派が展開した。民族の固有文化と伝統への関心がナショナリズムとも結びついた。芸術家は天才として称揚され、独創性が最高の価値とされた。

【日常での例】

「自然の中で心が洗われる」「理屈より直感を信じる」という感覚はロマン主義的。

【批判と限界】

非合理主義への傾斜、過去の美化、ナショナリズムの排他性への加担が批判される。

さらに深く

【思想の深層】

ロマン主義の哲学的核心は「啓蒙理性批判」にある。啓蒙主義が普遍的理性・進歩・分析的思考を称揚したのに対し、ロマン主義は理性による世界の「脱魔術化」(ウェーバー)への反動として、理性では捉えられない実在の次元(感情・直観・想像力・無意識・自然の生命力)を回復しようとした。ヘルダーの有機的・歴史的国民精神論(フォルクスガイスト)、フィヒテの「自我の自己措定」(主体の能動的自己創造)、シェリングの自然哲学(自然は眠れる精神、精神は目覚めた自然)がロマン主義の哲学的背景をなす。詩人・芸術家をロマン主義は「天才」として特権化した。天才は規則に従うのではなく、規則を生み出す創造的能力を持つ(カントの天才論の展開)。ノヴァーリスは「哲学とは本来ホームシックであり、どこにいてもわが家にいようとする衝動だ」と言い表した。失われた全体性・統一性への渇望がロマン主義の原動力である。

【歴史的展開】

18世紀後半のシュトゥルム・ウント・ドラング運動(ゲーテ『若きウェルテルの悩み』)が前夜。1790〜1850年にドイツ(シュレーゲル兄弟・ノヴァーリス・ホルダーリン・シラー・ゲーテ)、英国(コールリッジ・ワーズワース・バイロン・シェリー・キーツ)、フランス(ユゴー・ドラクロワ・ベルリオーズ)が展開した。音楽ではベートーヴェン・シューベルト・ショパン・ワーグナーがロマン主義音楽の黄金期を形成した。

【現代社会との接点】

自然への逃避・アウトドアブーム・農的生活への憧れは現代的ロマン主義の表れといえる。テクノロジー礼賛への反動としての「アナログ回帰」(レコード・フィルム写真・手書き)にもロマン主義的感性が見られる。ファンタジー文学・映画(指輪物語・ゲーム・オブ・スローンズ)が中世・神話的世界を舞台とするのも同様。

【さらに学ぶために】

ゲーテ『若きウェルテルの悩み』(高橋義孝訳、新潮文庫)はロマン主義感性の文学的表現として最適な入門。以賀良平『ロマン主義の精神』は日本語でのロマン主義概説。アイザイア・バーリン『ロマン主義の根源』(田中治男・三石庸子訳、岩波書店)は哲学的分析として優れる。

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