一神教
唯一の神を信仰し、絶対的な超越者を中心に据える思想
この思想とは
唯一の超越的な神の存在を信仰し、その神との関係を人生の中心に据える宗教的思想。
【生まれた背景】
古代イスラエルのヤハウェ信仰が多神教的環境の中から一神教へと発展し、ユダヤ教・キリスト教・イスラームという三大一神教の基盤となった。ゾロアスター教の二元論的一神教も重要な先駆。
【主張の内容】
世界は唯一の人格的な神によって無から創造された。神は全知・全能・全善であり、歴史に介入し、人間に道徳的要求を行う。ユダヤ教では律法(トーラー)の遵守と契約、キリスト教ではイエスの贖罪と愛(アガペー)、イスラームでは神(アッラー)への絶対帰依(イスラーム)と五行が中心となる。哲学的には、アンセルムスの本体論的証明、トマスの五つの道、パスカルの賭けなど神の存在証明の試みがなされた。キルケゴールは信仰を理性を超えた「飛躍」として捉えた。ティリッヒは神を「存在そのものの根拠」として再解釈した。
【日常での例】
「すべてを超えた絶対的な存在を信じる」という宗教的態度は一神教的。
【批判と限界】
悪の問題(全善全能の神と悪の共存)、宗教間の排他性・不寛容が批判される。
さらに深く
【思想の深層】
一神教の哲学的中心問題は「悪の問題(problem of evil)」にある。全知・全能・全善の神が存在するならば、なぜ世界に悪(自然災害・疾病・大量虐殺)が存在するのか? この問題への主要な応答を弁神論(theodicy)という。自由意志弁神論:神は人間に自由意志を与えたため、悪の選択を強制的に妨げることができない。霊魂形成弁神論(イレナエウス・ヒック):苦しみは魂の成長・道徳的発展のために必要。抗議神学(ウィーゼル):神義論の試みそのものを拒否し、神に抗議する。プロセス神学:神は全能ではなく世界と共に発展する説得的(強制的ではない)存在。神の存在証明の哲学的伝統も重要だ。アンセルムスの本体論的証明(最高の存在が概念としてのみ存在することは矛盾する)・トマスの宇宙論的証明(すべての動かされるものには動かす者があり、第一動者としての神が必要)・目的論的証明(設計の複雑さは設計者を示唆する)。これらへのカント・ヒューム・ダーウィンの反論も哲学史の重要部分。
【歴史的展開】
ユダヤ教の起源(紀元前13〜7世紀に多神教的背景から一神教へ)→キリスト教(1世紀)→イスラーム(7世紀)という三大一神教の系譜。哲学的神学(アレクサンドリアのフィロン・アウグスティヌス・トマス・アクィナス)が一神教をギリシア哲学と統合した。宗教改革(ルター・カルヴァン)が一神教のあり方を変革。啓蒙以降、理神論(神は創造後は世界に介入しない)・不可知論・無神論との緊張が続く。
【現代社会との接点】
ホロコーストはユダヤ教神学に「アウシュヴィッツ以後、神についていかに語るか」という根本的問いを突きつけた。世俗化する社会での宗教の役割、宗教間対話と共存の問いは現代的課題として残る。
【さらに学ぶために】
C・S・ルイス『痛みの問題』(中村妙子訳、新教出版社)は一神教の立場から悪の問題に向き合う。アームストロング『神の歴史』(高尾利数訳、柏書房)は三大一神教の歴史を概観する。バートランド・ラッセル『私はなぜキリスト教徒でないか』(大竹勝訳、理想社)は批判的視点として有益。




