痛
『痛みの問題』
いたみのもんだい
C・S・ルイス·現代
一神教の立場から悪の問題に向き合ったC・S・ルイスの弁証論的著作
宗教哲学
この著作について
オックスフォードの英文学者にして『ナルニア国物語』の著者C・S・ルイスが、若き日にキリスト教信仰に回心した後、一般読者に向けて書いた弁証論的著作。
【内容】
本書は「もし神が善であり全能であるなら、なぜ被造物は苦しむのか」という悪の問題を真正面から扱う。ルイスはまず、人間が神を信じる宗教的衝動の由来を検討し、次に神の全能と善性の意味を精密に定義し直す。そのうえで、自由意志を持つ被造物の存在を神が選ばれた以上、悪用の可能性は避けられず、自然界の苦しみも被造物の自由と成熟のための避けがたい代償であると論じる。後半では、神の愛と人間の痛み、動物の苦しみ、地獄と天国の意味が、神学の伝統を噛み砕いた表現で展開される。文体は平易だが、議論は神学的に厳密である。
【影響と意義】
英語圏で最も読まれたキリスト教弁証論の一冊として、本書は世俗化する二十世紀の知識人に対して信仰の知的根拠を提示する役割を担い続けている。後のアルヴィン・プランティンガらの分析哲学的弁神論の議論と合わせ、現代宗教哲学における標準的参照点の一つである。
【なぜ今読むか】
災害や理不尽な喪失に直面したとき、「なぜこのようなことが」という問いは宗教の有無を問わず誰もが抱える。本書は即効の慰めを与える書ではないが、苦しみに意味を与える古典的語彙を冷静に点検する機会を提供してくれる。