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『イギリス法釈義』

いぎりすほうしゃくぎ

ウィリアム・ブラックストン·近代

英国コモン・ローを体系化した古典的法学書

法哲学コモン・ロー

この著作について

オックスフォード大学初代ヴァイナー教授職に就いた法学者ウィリアム・ブラックストンによる、英国コモン・ローの体系的解説書である。1765年から1769年にかけて全4巻が刊行された。

【内容】個人の権利、財産権、不法行為、刑事法という四部構成で英国法を体系的に整理する。判例の集積として発展してきたコモン・ローを、ローマ法的な体系性を意識しつつ秩序立てて記述した点に特色がある。法学初学者から実務家まで幅広く参照される教科書として書かれており、序論では法一般の本性や自然法との関係についても論じられる。

【影響と意義】英米法学の古典として絶大な影響力を持ち、独立後のアメリカでも長く法学教育の基礎文献となった。一方で、ベンサムは本書の序論部分を取り上げて『政府論断片』で批判し、慣習や擬制に依存する英国法の非合理性を指摘して功利主義法学を構想する出発点とした。本書はベンサムの法思想にとって重要な敵役だった一方、彼の法思想を生み出す土壌でもあった。

【なぜ今読むか】完訳邦訳はないが、明治初期に星亨らが部分訳『英国法律全書』を刊行している。法と慣習の関係を考える素材として、また功利主義の批判対象として、思想史的に押さえておくべき著作である。

さらに深く

【内容のあらまし】

序論の第1節は、1758年10月25日、ヴァイナー講座の開講にあたりオックスフォードで読まれた講義である。第2節は、創造主の意志である自然法と啓示の法に人間の法は反してはならず、自然法に反する人間の法は効力を持たないと述べる。そのうえで国内法を、国家の最高権力が定め、正しいことを命じ、誤ったことを禁じる市民的な行為の規則と定義し、法を欠いた衡平はすべての判事を立法者にしてしまうと戒める。第3節はイングランドの法を、慣習にもとづく不文のコモン・ローと成文の制定法に分ける。理性に反する議会制定法は無効とよく言われるが、議会が明白に不合理なことを定めたなら、それを抑える力は知らないと断る。第4節はこの法が及ぶ土地を確かめる。

第1巻「人の権利」は、個人の絶対的な権利を、身体の安全、身体の自由、私的な財産の三つにまとめ、イングランドに上陸した奴隷は自然権については直ちに自由人になると書く。議会は自然に不可能でないことなら何でもでき、その力を全能と呼ぶ人もいると記し、少し大胆すぎる比喩だと添えつつ、議会がしたことを覆せる権威は地上にないと認める。「国王は悪をなしえない」という格率が意味するのは二つだけで、一つは統治上の過ちを国王個人に帰さないこと、もう一つは大権が人民を害するために使えないことだという。婚姻では夫と妻は法のうえで一人の人格となり、妻の法的な存在は停止されるか、少なくとも夫のそれに組み込まれる。

第2巻「物の権利」は、財産権を、他の誰の権利も排除して外界の物に行使する唯一で専制的な支配と呼び、その根拠を考える人はほとんどいないと続ける。第3巻「私的な権利侵害」は、その管轄を論じる第7章で、拒まれたあらゆる権利には救済が、あらゆる侵害には相応の償いがなければならないと掲げる。第17章の終わりでは、不動産をめぐる訴訟の仕組みを、騎士道の時代に建てられ近代の住人向けに改装された古いゴシックの城にたとえ、第23章は陪審による裁判をイングランド法の栄光と呼ぶ。

第4巻「公的な権利侵害」は、重罪の推定による証拠は慎重に扱うべきだとして、10人の罪人を逃すほうが1人の無実の者を苦しめるよりよいという法の考えを引く。最終の第33章はイングランド法の歩みを、ノルマン征服、エドワード1世の治世、宗教改革、チャールズ2世の王政復古、1688年の革命を区切りとする6つの時期に分けてたどる。国制の欠点も隠さなかったと述べたうえで、この気高い建物を支え、修繕し、美しくする務めは主に貴族と議員に託され、ブリテンの自由を守ることは彼らが自分自身と祖先と子孫に負う義務だと結ぶ。

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