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近代西洋

アダム・スミス

1723年1790年

「見えざる手」を説いた経済学と道徳の哲学者

経済学道徳感情自由主義
アダム・スミス

概要

「見えざる手」の経済学者にして、共感に基づく道徳哲学者。経済と倫理を統合的に捉えたスコットランド啓蒙の巨人。

【代表的な思想】

■ 国富論と見えざる手

『国富論』で分業が生産性を飛躍的に向上させることを示し、自由市場において各人が自己利益を追求することが「見えざる手」によって社会全体の繁栄につながると論じた。重商主義を批判し自由貿易の利点を説いた。

■ 道徳感情論と共感

『道徳感情論』で道徳の基盤は共感にあるとした。他者の立場に身を置く想像力を通じて道徳判断が形成され、「公平な観察者」という内面の審判が行為の適切さを判断すると論じた。

■ 政府の役割

市場の自由を重視しつつも、国防・司法・公共事業など市場だけでは供給できない領域における政府の役割を認めた。

【特徴的な点】

ヒュームの親友であり、スコットランド啓蒙の知的環境の中で育った。単なる自由放任の擁護者という通俗的イメージとは異なり、経済活動の道徳的基盤を深く考察した思想家である。

【現代との接点】

市場経済の功罪、格差問題、企業の社会的責任、行動経済学における共感と合理性の関係など、スミスが提起した問いは現代経済社会の根本課題として生き続けている。

さらに深く

【時代背景と生涯】

アダム・スミスは1723年、スコットランドのカーコーディに生まれた。グラスゴー大学でフランシス・ハチソンに道徳哲学を学び、オックスフォード大学で6年間を過ごした。グラスゴー大学教授として1759年に『道徳感情論』を発表して名声を得た後、フランスに渡ってケネーやテュルゴーら重農主義者と交流した。帰国後10年の研究を経て1776年に『国富論』を刊行した。晩年は税関の監督官を務め、1790年に没した。

【思想的意義:道徳と経済の統合】

スミスは「見えざる手」の経済学者というイメージで知られるが、『道徳感情論』と『国富論』は矛盾するものではなく、一つの統合的な社会理論を構成している。『道徳感情論』では共感(他者の立場に身を置く想像力)を道徳の基盤とし、「公平な観察者」という内面の審判が行為の適切さを判断するとした。『国富論』では、自己利益の追求が市場機構を通じて社会全体の利益に結びつく過程を分析した。しかしスミスは無条件の自由放任を説いたのではなく、独占の弊害を批判し、公共事業や貧者のための教育の必要性を認めていた。

【さらに学ぶために】

『国富論』は大部だが、第一篇「分業」の章から読み始めるとスミスの分析の鋭さが実感できる。山岡洋一訳(日本経済新聞出版社)が現代語で読みやすい。堂目卓生『アダム・スミス』(中公新書)は二つの著作の統一的解釈を提示する優れた入門書である。

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