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功利主義

こうりしゅぎ

ミル·近代

「最大多数の最大幸福」を精緻化した倫理学の古典

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哲学

この著作について

ジョン・スチュアート・ミルが1861年に雑誌連載後、1863年に単行本として公刊した、倫理学の基本文献。

【内容】

行為の正しさは、それが生み出す幸福の総量で判断される、という功利主義の原理を擁護する。ただしベンサムが快楽を量としてのみ測ろうとしたのに対し、ミルは快楽に質的な違いを認めた。「満足した豚であるよりも不満足な人間であるほうがよい。満足した愚者であるよりも不満足なソクラテスであるほうがよい」という有名な一節がこの立場を象徴する。さらに「最大多数の最大幸福」の原理をキリスト教の黄金律と結びつけ、個人の幸福と社会全体の幸福を調和させる道を示そうとした。

【影響と意義】

功利主義を教養ある読者に広く理解させることに成功した書物で、以後の英語圏倫理学の出発点となった。現代の公共政策、医療倫理、環境倫理などで最も広く使われている倫理理論の一つで、ピーター・シンガーらの現代功利主義も直接ここに連なる。

【なぜ今読むか】

短く読みやすい。「正しさとは結果で決まるのか、それとも動機で決まるのか」という倫理学の根本問題を、具体例を通じて自分の頭で考える訓練として、最良の入門書であり続けている。

さらに深く

【内容のあらまし】

第1章でミルは、道徳の基礎を問う議論が古来決着していない現状を見渡し、その不毛から抜け出すために功利の原理を擁護すると宣言する。第2章はその原理の説明にあてられる。最大幸福の原理とは、幸福を増やしその逆を減らす傾向に応じて行為の正しさが決まるという考えだ。ここでミルは先行するベンサムの量的功利主義に重要な修正を加える。快楽には質の差がある。両方を経験した能力ある判定者がより望ましいと判断する種類の快楽は、たとえ量がやや少なくとも、より価値が高いと認められる。豚と人間、愚者とソクラテスを対比した有名な一節が、ここでこの立場を象徴する形で示される。

同じ章で、よくある誤解への反論が並ぶ。功利主義は「豚にふさわしい」哲学だ、誰もが幸福になれないという反論、計算する余裕などないという反論、動機を考慮しないのではないかという反論などが、一つひとつ整理されて退けられる。中でも、行為者は自分の幸福と他人の幸福を公平な観察者のように扱うべきだ、という規則は、福音書の黄金律と同じ精神だと結びつけられる。

第3章は功利主義が私たちの内面に持つ拘束力の源泉を扱う。良心という制裁は外的な権威ではなく、人類との一体感に根ざす社会的感情から育つと説かれる。第4章は功利の原理がそもそも証明可能かを問う独特の章だ。各人がそれぞれ自分の幸福を望むという事実から、人類全体の幸福が善であるという結論が導かれる。第5章では正義感情の分析が行われ、権利侵害への憤りが社会的有用性に根ざすと論じられ、正義と功利の対立を解消する道が示される。

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