道
『道徳と立法の原理序説』
どうとくとりっぽうのげんりじょせつ
ジェレミー・ベンサム·近代
最大多数の最大幸福を定式化した功利主義倫理学の出発点
哲学政治
この著作について
ジェレミー・ベンサム(Jeremy Bentham)が1789年に刊行した倫理学・法哲学の古典(原題『An Introduction to the Principles of Morals and Legislation』)。功利主義倫理学と近代法学の出発点に位置する記念碑的著作で、のちのミル・シジウィック・現代倫理学にまで連なる思想的系譜の源流である。
【内容】
本書は「人類は苦と快の二人の主人の支配下にある」という有名な一文で始まる。ベンサムは個人・集団の行為の正しさは、それが生み出す快と苦の総量で測られるべきだと主張し、この立場を功利の原理と呼ぶ。快苦の計算可能性を追求するため、強度・持続・確実性・近接性・豊穣性・純粋性・範囲の七基準からなる「快楽計算」を提示する。続く章では快苦の種類と人間本性の分類、動機・意図・意志の法的責任における扱い、罪の軽重と刑罰の設計原理、立法の技術が精密に論じられる。動物の苦痛をも道徳的考慮に含めるべきだとする脚注は、二十世紀動物倫理論の出発点として繰り返し引用されてきた。
【影響と意義】
本書はジョン・スチュアート・ミル、ヘンリー・シジウィックを経て、現代の行為功利主義・規則功利主義・選好功利主義へと系譜化される。経済学における効用理論、費用便益分析、政策評価、動物倫理、ピーター・シンガーの実践倫理にまで本書の発想が生き続けている。
【なぜ今読むか】
AI倫理・医療資源分配・気候政策など、集合的な快苦の計算が避けられない現代の意思決定において、本書の明晰な定式化はなお最短の地図となる。
著者
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