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『アダム・スミス』
堂目卓生·現代
アダム・スミスの思想の全体像を描く入門書
経済学入門
この著作について
経済学史研究者・堂目卓生《どうめたくお》が、アダム・スミスの『道徳感情論』と『国富論』を一貫した思想体系として読み解いた中公新書の名著。
【内容】
本書はまず、スミスを自由放任の旗手として単純化する通俗的理解を排する。そのうえで、初期の『道徳感情論』の核となる「共感(シンパシー)」の理論、その延長線上で内面化される「公平な観察者」という倫理装置、そこから『国富論』の分業論・市場分析・政府の役割論までを、一つのプロジェクトとして再構成する。人々が互いに「公平な観察者」の視点を借りて自分を律し合う社会でこそ、競争と交換が秩序を生む。スミスにおける「見えざる手」は、この倫理的土台の上でのみ機能するとされる。
【影響と意義】
二十一世紀の日本経済学界において、市場原理主義への反省のなかで道徳哲学者としてのスミス像を再定位した意義は大きい。金融危機以降の経済思想の転換を先取りする仕事として国際的にも注目され、スミスを「経済学の父」だけでなく道徳哲学者として読む潮流を、一般読者にまで開いた。
【なぜ今読むか】
「スミス=市場原理主義」という雑な通念から抜け出し、倫理と経済を統合して考える足場が得られる。格差や金融危機を超えて資本主義の未来を考えたい読者に、新書の手軽さで本質的な入口を提供してくれる。
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