
アマルティア・セン
Amartya Sen
1933年 — 存命
ケイパビリティと自由の経済哲学者
概要
経済学に倫理の視点を取り戻し、「ケイパビリティ」の概念で人間の自由と発展を問い直したノーベル賞経済哲学者。
【代表的な思想】
■ ケイパビリティ・アプローチ
人間の福祉は所得やGDPではなく、「何ができるか・何になれるか」という潜在能力(ケイパビリティ)で測るべきだとした。この理論は国連の人間開発指数(HDI)の理論的基盤となった。
■ 飢饉と権原(エンタイトルメント)
飢饉は食糧の絶対量の不足だけでなく、人々が食糧にアクセスする権利(権原)の剥奪によって起こることを実証した。民主主義と報道の自由が機能する国では飢饉が起こらないことを論じた。
■ 比較的正義論
『正義のアイデア』で、ロールズの理想的正義論(完全に正義な社会の設計)を批判的に補完し、現実の不正義を比較・是正していく実践的なアプローチを提唱した。
【特徴的な点】
スミスやマルクスが経済学と倫理学を統合的に論じていた伝統を現代に復活させた。ロールズが社会制度の設計を重視したのに対し、センは人々の実際の生活における自由と能力に焦点を当てる。ヌスバウムと共にケイパビリティ理論を発展させたが、普遍的リストの設定には慎重な立場をとる。
【現代との接点】
開発援助、教育政策、ジェンダー平等、健康政策など、グローバルな社会政策の設計においてケイパビリティ・アプローチは標準的な理論枠組みとなり、持続可能な開発目標(SDGs)の思想的背景にもなっている。
さらに深く
【思想の全体像】
アマルティア・セン(1933〜)は、インドのベンガル地方に生まれた経済学者・哲学者である。1998年にノーベル経済学賞を受賞した。経済学が効率性ばかりを追求して倫理の視点を失ったことを批判し、アダム・スミスやマルクスが経済と道徳を統合的に論じていた伝統の現代的復活を目指した。
【主要著作の解説】
『貧困と飢饉』(1981)では、飢饉が食糧の絶対量の不足だけでなく、人々が食糧にアクセスする「権原(エンタイトルメント)」の剥奪によって生じることを実証した。民主主義と報道の自由が機能する国では大規模な飢饉が起こらないという発見は画期的であった。「ケイパビリティ・アプローチ」では、所得やGDPではなく「何ができるか・何になれるか」という潜在能力で福祉を測るべきだとした。『正義のアイデア』(2009)では、ロールズの「完全に正義な社会」を構想する理想論に対し、現実の不正義を比較し是正していく実践的なアプローチを提唱した。
【批判と継承】
ヌスバウムとの間には、ケイパビリティの具体的リストを設定すべきかどうかという方法論的相違がある。しかしセンの理論は国連の人間開発指数(HDI)の基盤となり、SDGs(持続可能な開発目標)の思想的背景ともなっている。
【さらに学ぶために】
東郷雄二『アマルティア・セン:経済学と倫理学』が入門に適している。「豊かさとは何か」を考えるとき、お金以外の尺度を提示するセンの視点は欠かせない。
主な思想
近い哲学者
関連する悩み
関連する著作
関連する哲学者と話してみる
