「他者は地獄だ」
サルトル現代
サルトルの戯曲『出口なし』で、死後の密室に閉じ込められた登場人物が口にする台詞。
この言葉について
さらに深く
【出典】
本人の著作にある。サルトルの一幕劇『出口なし』(原題 Huis clos)の台詞で、原文は l'enfer, c'est les autres(ランフェール・セ・レゾートル、地獄とは他人のことだ)。ドイツ占領下のパリで書かれ、1944年5月にヴィユー・コロンビエ座で初演された。死んだ三人の男女がホテルの一室に閉じ込められるが、串刺しの杭も焼き網も無く、伝統的な地獄の責め苦の道具は出てこない。イネスはすぐに罪を認めるが、エステルは二度目の告白でようやく子殺しという本当の罪を明かし、ガルサンは自分の恥ずべき臆病さを認めるまでに三度の告白を要する。永遠に同じ部屋を分け合い続けることそのものが、三人への責め苦になる。
【よくある誤解】
サルトル本人の人生訓のように引かれることが多いが、これは劇中の人物が口にする台詞である。1965年、初演から20年以上たってドイツ・グラモフォンがこの劇を録音した際に、サルトルは序文のようなものを書いて自ら吹き込み、批評の誤解を正そうとした。そこで示した条件は、他者との関係が「ねじれ、腐っている」場合という限定である。スペインの大学の学術誌に載った論文は、これをサルトルがこの文句の普遍的な価値を否定したものと整理し、『出口なし』をそうした偽りの関係の見本と位置づけている。誤解の源は、劇の台詞が劇から切り離され、格言として独り歩きしたことにある。
【この言葉のその後】
台詞の背景には、前年の1943年に出た主著『存在と無』の他者論がある。そこでサルトルは、人間関係を、他人の「まなざし」によって自分が見られる対象にされる、二人の間の対立という形で描いた。サルトルは解放後から1960年代初めにかけて、『嘔吐』のような小説や戯曲、雑誌の創刊、さまざまな政治的抗議を通じて、時代を代表する知識人となった。
この言葉を残した人物
サルトルのほかの名言
「人生」の名言
「天上天下唯我独尊」
ブッダが生まれてすぐ七歩歩いて唱えたと伝わる、自らを世界の最上の者とする宣言の言葉。
「諸行無常」
ブッダの教えとして経典に伝わる、形づくられたものはすべて移り変わるという仏教の基本の句。
「一切皆苦」
ブッダの教えを四つの句にまとめた四法印の一句で、作られたものはすべて苦だと説く言葉。
「死を想え」
セネカの死生観を要約した言葉として知られる、自分が死ぬことを忘れるなというラテン語の句。
「シーシュポスは幸福であると想像しなければならない」
カミュが『シーシュポスの神話』の結びで、不条理を見すえて生きる人間を描いた一文。
「生きるべきか死ぬべきか、それが問題だ」
シェイクスピアの戯曲『ハムレット』第三幕第一場で、王子ハムレットが語る独白の第一行。