嘔
『嘔吐』
おうと
サルトル·現代
サルトルの実存主義小説
哲学
この著作について
サルトルが三十三歳で発表した処女小説にして、実存主義文学の出発点となった日記体の作品。
【内容】
地方都市ブーヴィルに暮らす歴史家ロカンタンは、ある日、手に取った小石や路面のベンチがなぜか突然、吐き気を催させるのに気づく。彼の日記の断片を追うなかで読者は、事物が意味を失い、ただ「そこにある」という剥き出しの事実性に出会う経験に立ち会う。公園のマロニエの根が存在の塊として迫ってくる場面が頂点となり、最後にジャズ曲「Some of these days」に救いの手がかりを見出して小説は閉じる。不条理・吐き気・書くことの意味が地続きに描かれていく。
【影響と意義】
後の大著『存在と無』で精緻化される実存哲学の核となる洞察を、小説という形式で先取りした作品である。戦後フランス文学・実存主義運動の旗印となり、カミュの『異邦人』とともに二十世紀中葉の青年たちの必読書となった。日本でも新世代の思想青年に強い影響を残した。
【なぜ今読むか】
世界や自分の人生が不意に意味を失って見える瞬間は、今も誰にでも訪れる。その感覚を病気や弱さとせず、存在への一つの開かれと捉え直す語彙を、本書は豊かに与えてくれる。
著者
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