「一切皆苦」
ブッダ古代
ブッダの教えを四つの句にまとめた四法印の一句で、作られたものはすべて苦だと説く言葉。
この言葉について
さらに深く
【出典】
一切皆苦という4字の形は、ブッダの言葉をそのまま写したものではない。仏教の基本はしばしばこの句を含む四句に要約され、これを一般に四法印と呼ぶ。ときには一切皆苦を除いて三法印ともいう。対応する古い句は漢訳の『増壹阿含経』にある。ある経は四つの法の本末を数えて、一切の諸行はみな無常であることを第一に、一切諸行苦(いっさいしょぎょうく、すべての作られたものは苦である)を第二に、一切の諸行は無我であることを第三に、涅槃の安らぎを第四に挙げる。パーリ語の『ダンマパダ』第277偈と第279偈も、すべての作られたものは無常である、すべてのものは無我である、と智慧によって見るとき人は苦から離れる、これが清らかさへの道だ、と説いている。
【よくある誤解】
人生は苦しいことばかりだという悲観として受け取られやすい。しかし漢訳の句の主語は人生ではなく、一切の諸行、つまり作られたものすべてである。また『ダンマパダ』の偈が、ものの本性を智慧によって見ることを清らかさへの道と呼ぶように、こうした見方は出口へ向かう第一歩として置かれている。仏教研究でも、これは人生のあらゆる状態や出来事が必ず不満足に感じられるという、ありえない主張ではないと注意されている。ここでいう苦は、移ろうものの経験から生じる挫折や疎外、絶望のような、実存的な苦しみを指すと説明される。
【この言葉のその後】
同じ『増壹阿含経』の別の経でも、死を免れたいなら四つの法の根本を思惟せよと説かれる。すべての行は無常、すべての行は苦、すべての法は無我、滅し尽くすことが涅槃、の四つのうち一切行苦は第二の根本に数えられ、これを修めれば生、老、病、死や憂い悩みから離れられると続く。苦の真理の理解には段階があり、最も深い段階はすべてが苦の性質をもつと悟ることだとされる。日本では、この教えは四法印の一句として定着している。
この言葉を残した人物
ブッダのほかの名言
「人生」の名言
「死を想え」
セネカの死生観を要約した言葉として知られる、自分が死ぬことを忘れるなというラテン語の句。
「シーシュポスは幸福であると想像しなければならない」
カミュが『シーシュポスの神話』の結びで、不条理を見すえて生きる人間を描いた一文。
「生きるべきか死ぬべきか、それが問題だ」
シェイクスピアの戯曲『ハムレット』第三幕第一場で、王子ハムレットが語る独白の第一行。
「吟味されない生に、生きる価値はない」
プラトン『ソクラテスの弁明』が伝える、法廷のソクラテスが自らの生き方を語った言葉。
「万物は流転する」
ヘラクレイトスの思想を後世が要約した句として知られる、世界はたえず変化するという言葉。
「運命を愛せ」
ニーチェが『悦ばしき知識』で、必然的なものを美しいと見て愛そうと書いた言葉。