道
『道徳と宗教の二源泉』
どうとくとしゅうきょうのにげんせん
アンリ・ベルクソン·現代
開かれた社会と閉じられた社会の対比を打ち立てたベルクソン晩年の主著
哲学宗教
この著作について
アンリ・ベルクソン(Henri Bergson)が1932年に刊行した晩年の主著(原題『Les Deux Sources de la morale et de la religion』)。ベルクソンの五大主著の最終作にあたり、彼の生の哲学・時間論・進化論を倫理と宗教の領域に拡張した総決算的著作である。
【内容】
本書は道徳と宗教のそれぞれに、二つの根源的源泉を区別することから始まる。一方は「閉じられた社会の道徳」と「静的宗教」であり、集団の存続と秩序に奉仕する拘束的機能として働く。他方は「開かれた社会の道徳」と「動的宗教」であり、人類全体を包括する普遍的愛に向かう創造的飛躍(élan vital)の発現である。前者が義務と反復の論理に貫かれているのに対し、後者は個別的な聖人や神秘家の実例に現れる変革的生命の力として描かれる。ベルクソンはソクラテス、福音書、仏教の聖者、カトリックの神秘家、ヒンドゥーの聖者を並べて、開かれた宗教の歴史的系譜を描き出す。結末では機械化と精神化のあいだの選択として、現代文明の岐路が提示される。
【影響と意義】
本書はカール・ポパー『開かれた社会とその敵』の題名の由来の一つとされ、二十世紀の政治哲学における「開かれた/閉じられた社会」の対比の源流となった。ブレーズ・パスカル、シモーヌ・ヴェイユ、テイヤール・ド・シャルダンら宗教哲学・神秘主義研究にも広範な影響を残した。
【なぜ今読むか】
排外主義と普遍主義の緊張が新たな形で再燃する時代に、開かれた連帯の源泉を問う本書は政治思想の補助線として依然有効である。
著者
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