マ
『マルクスその可能性の中心』
まるくすそのかのうせいのちゅうしん
柄谷行人《からたにこうじん》·現代
価値形態論からマルクスを読み直した批評の名著
哲学社会思想
この著作について
文芸批評家・柄谷行人(からたにこうじん、1941〜)が1973年から雑誌「群像」に連載し、1978年に講談社から単行本として刊行した批評である。第10回亀井勝一郎賞を受賞し、1990年に講談社学術文庫に収められた。
【内容】
本書は同題の中心論文に加え、夏目漱石・武田泰淳論などを併録する。表題作はマルクス『資本論』の価値形態論を内在的に読み直し、商品が異質な価値を等値する仕組みのなかに、マルクス思想の「中心」を見出す。商品交換が前提とする他者性・外部性・差異の働きを浮かび上がらせ、新左翼運動が崩壊した1970年代に「マルクスは古い」と切り捨てる風潮の只中で、マルクス読解の新しい地平を切り開いた。
【影響と意義】
アルチュセール・構造主義第二世代を形成した。ミシェル・フーコー、ラカン、レヴィ=ストロースと並ぶ六〇年代フランス構造主義の核心的テクストとも響き合う日本独自の達成として位置づけられる。本書で導入された「外部性」概念は、後の『探究Ⅰ・Ⅱ』『トランスクリティーク』『世界史の構造』『力と交換様式』に至る柄谷の全仕事を貫く軸となる。
【なぜ今読むか】
ヒューマニズムか反ヒューマニズムかの対立が現代でも有効性を失わないなか、価値形態論を起点に資本主義の根源を問う本書は、ポスト資本主義の議論にも示唆を与える。