哲
『哲学書簡』
てつがくしょかん いぎりすだより
ヴォルテール·近代
イギリスの自由と寛容を紹介したヴォルテールの啓蒙的著作
哲学
この著作について
ヴォルテールが三年間のイギリス亡命の体験をもとに書き上げた書簡形式の思想的ルポルタージュで、『イギリスだより』の名でも知られる啓蒙思想の出発点的著作。
【内容】
本書は全二十五通の書簡形式をとる。クエーカー教徒、長老派、ソッチーニ派、英国国教会といった諸宗派が共存する宗教的寛容、議会政治と立憲君主制、ロックの経験論とニュートンの自然学、ベーコンに始まる実験科学の伝統、シェイクスピアやポープらの演劇・文学、商業の隆盛と上流階級の振る舞いが、明快かつ皮肉に富んだ筆致で紹介される。フランスの旧体制を名指しで批判する言葉は抑えられているが、絶対王政、宗教的不寛容、衒学的な形而上学への痛烈な批評として全体が機能するように書かれている。
【影響と意義】
刊行直後にフランスで発禁・焚書処分となり、ヴォルテールは再びの亡命を余儀なくされた。しかし本書はフランス啓蒙思想の起爆剤となり、モンテスキュー『法の精神』、ルソー、百科全書派と並ぶ啓蒙文学の古典として、ヨーロッパ近代思想の形成に決定的な役割を果たした。
【なぜ今読むか】
旅行記の軽やかさと思想書の重量感が同居する、啓蒙文学の奇跡のような一冊である。言論の自由や宗教的寛容が「なぜ大切なのか」を、具体的な社会の細部を通じて肌で感じ取りたい読者に勧められる。
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