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帝国主義

国家が軍事力や経済力で他国・他地域を支配・拡張する思想と体制

社会思想支配植民地

この思想とは

国家が軍事力・経済力・文化的優越を背景に他国や他地域を支配・搾取する思想と体制。

【生まれた背景】

19世紀後半、産業革命を経た欧米列強が原料供給地と市場を求めてアフリカ・アジアを分割した。レーニンは帝国主義を資本主義の最高段階と規定し、資本の過剰蓄積が海外膨張を不可避にすると論じた。社会ダーウィニズムや白人優越主義が支配の正当化に利用された。

【主張の内容】

帝国主義は明確な思想体系というより、国家の拡張を正当化する論理の総体である。文明化の使命・人種的優越・経済的必然性などが論拠として用いられた。支配は軍事的征服だけでなく、経済的従属や文化的同化を通じても行われる。

【日常での例】

多国籍企業が途上国の資源や安価な労働力に依存する構造は「新帝国主義」と呼ばれ、植民地時代の支配関係の延長として議論される。

【批判と限界】

ポストコロニアリズムは帝国主義の文化的・心理的影響を批判し、被支配者の視点から歴史を読み直す。帝国主義の概念が広がりすぎると分析的有用性が低下するという指摘もある。

さらに深く

【思想の深層】

帝国主義の思想的分析は二つの軸で行われる。経済的説明と文化的説明。レーニンの経済的帝国主義論(『帝国主義論』1917年)はホブソンの分析を発展させた。資本主義の最高段階として金融資本が形成され、国内での資本の過剰蓄積が海外での投資先を必要とし、帝国主義的膨張が不可避となる。植民地は原材料供給・商品市場・余剰資本の投資先として機能する。文化的帝国主義論(サイード・スピヴァク)は、支配は軍事力だけでなく、表象・教育・メディアを通じた文化的「規格化」によっても行われることを示す。「文明化の使命」「白人の責務(キプリング)」は支配を正当化するイデオロギーである。シュミット的視点では帝国主義は「文明と野蛮」の空間的区分として機能する。植民地空間は「例外状態」として通常の法が適用されない領域となる(アガンベンによる展開)。

【歴史的展開】

15〜16世紀のポルトガル・スペインによる大航海時代の植民地主義→17〜18世紀のオランダ・英国・フランスの商業帝国主義→19世紀後半「スクランブル・フォー・アフリカ」(アフリカ分割)・アジア植民地化→1905年ロシア・日露戦争(日本の帝国主義的台頭)→第一次大戦後の委任統治制度→1945〜1975年の脱植民地化(インド独立・アジア・アフリカ諸国の独立)→新帝国主義批判(多国籍企業・IMF構造調整・米国の軍事的覇権)。

【現代社会との接点】

「新植民地主義」批判として、先進国の多国籍企業が途上国の安価な労働力・資源を利用し、利益を本国に送金する構造が問われる。中国の一帯一路政策は「中国帝国主義」として批判される一方、支援国からは歓迎される場合もある。歴史的帝国主義の賠償・謝罪をめぐる論争(英国の奴隷制賠償要求、日本の植民地支配への謝罪)は現代的政治課題として残る。

【さらに学ぶために】

レーニン『帝国主義論』(宇高基輔訳、岩波文庫)は経済的帝国主義分析の古典。サイード『オリエンタリズム』(今沢紀子訳、平凡社ライブラリー)は文化的帝国主義分析の必読書。ウォーラーステイン『近代世界システム』(川北稔訳、名古屋大学出版会)は帝国主義を長期的な資本主義世界システムとして分析する。

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