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「万物は流転する」

ヘラクレイトス古代

ヘラクレイトスの思想を後世が要約した句として知られる、世界はたえず変化するという言葉。

人生

この言葉について

この世のすべては常に変化し続けているという、古代ギリシアの洞察を一言で表した句。

【背景】

紀元前500年頃に活動したヘラクレイトスの思想を、後世がまとめた言葉で、本人の断片にこの句そのものは無い。よく知られた川のたとえも、本人の文と、プラトンが伝えた形とで中身が違っている。

【解釈】

変化こそが世界のあり方であり、安定して見えるものも、その内側ではたえず移り変わっている。ヘラクレイトスはこのほか、火を世界の根本の素材と見なし、対立するものが一致するという考えも別に説いた。

【現代への示唆】

変化を恐れるのではなく受け入れること、今この瞬間の大切さを教えてくれる。仏教の「無常」とも通じる普遍的な知恵である。

さらに深く

【出典】

万物は流転する(ギリシア語でパンタ・レイ)という形の文は、ヘラクレイトスの断片には無い。著作は失われ、後代の引用として伝わる百あまりの断片から知るしかないが、その中にこの句は見当たらず、2024年の文献学的研究も、後世の要約か言い換えだと論じている。最も近い古い証言はプラトン『クラテュロス』402aで、ソクラテスに πάντα χωρεῖ καὶ οὐδὲν μένει(パンタ・コーレイ・カイ・ウーデン・メネイ、すべては去り、何ものもとどまらない)とヘラクレイトスの言葉を紹介させ、同じ川に二度入ることはできない、とも伝える。本人の言葉として確実な川の断片はB12で、同じ川に入る者には次々と別の水が流れてくる、という文である。

【よくある誤解】

すべては移り変わるので同じものなど何もない、という意味に取られやすい。しかし研究者の間には、確かな断片B12が言うのはもっと微妙なことだという読みがある。川は、水がたえず入れ替わることによってこそ同じ川であり続ける。変化と恒常は対立せず、分かちがたく結びついている。人間の体も同じように理解できる。プラトンが伝える二度入れないという強い流転説についても、1967年の研究が、B12の読み違えから生じうることを示した。その読み違えの出どころとしては、ヘラクレイトスの後継者クラテュロスを想定できるという。

【この言葉のその後】

クラテュロスは、同じ川には一度でさえ入れない、と言い足したことで知られる。プラトンはこのクラテュロス経由のヘラクレイトス説を、感覚で捉える世界のモデルとして使い、パルメニデスの説を知性で捉える世界のモデルとして使ったらしい。こうして早くから、ヘラクレイトスは万物の流転、パルメニデスは不動の代表という対の図式ができあがった。アリストテレスもまた彼を、火を究極の原理に置く質料一元論者として扱った。ヘーゲルは哲学史の講義で、ヘラクレイトスにおいて哲学の理念が思弁的な形で現れると評し、私が自分の論理学に取り入れなかったヘラクレイトスの命題は一つもない、とまで述べた。

この言葉を残した人物

「人生」の名言

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