
ジュディス・バトラー
Judith Butler
1956年 — 存命
ジェンダーのパフォーマティヴィティの哲学者
概要
ジェンダーを「演じること」として再定義し、アイデンティティの固定観念を根底から揺さぶったクィア理論の旗手。
【代表的な思想】
■ ジェンダーのパフォーマティヴィティ
主著『ジェンダー・トラブル』の核心概念。ジェンダーは生物学的に決定される本質でも内面的な属性でもなく、日常的に繰り返し演じられる行為(パフォーマンス)の蓄積によって構築される。性別は「である」ものではなく「する」ものであるとした。
■ セックスの文化的構築
生物学的性差(セックス)すらも文化的・言説的に構築されたカテゴリーであると論じ、自然と文化の二項対立そのものを問い直した。
■ 生のあやうさ(precariousness)
後期の倫理的転回において、すべての生命が持つ脆弱性と傷つきやすさに着目し、どの生が追悼に値するとされ、どの生が見えなくされるかという政治的問題を提起した。
【特徴的な点】
ボーヴォワールの「人は女に生まれるのではない」をさらに急進化し、フーコーの権力分析とデリダの脱構築を統合した。フェミニズムの「女性」という主体カテゴリーそのものを問い直した点で、従来のフェミニズムとも緊張関係にある。
【現代との接点】
LGBTQ+の権利運動やトランスジェンダーの問題、ノンバイナリーなアイデンティティの承認など、性とジェンダーをめぐる現代の社会変革に決定的な理論的基盤を提供している。
さらに深く
【思想の全体像】
ジュディス・バトラー(1956〜)は、アメリカの哲学者で、ジェンダーとセクシュアリティに関する思想で最も影響力のある現代の理論家の一人である。ボーヴォワールの「人は女に生まれるのではない、女になるのだ」という命題をさらに急進化させ、ジェンダーは生まれつきの本質ではなく、繰り返し「演じる」ことで構築されるものだと主張した。
【主要著作の解説】
主著『ジェンダー・トラブル』(1990)は、フェミニズムとクィア理論に革命をもたらした。バトラーは「ジェンダーのパフォーマティヴィティ」という概念で、性別は「である」ものではなく「する」ものであると論じた。さらに生物学的性差(セックス)すら文化的に構築されたカテゴリーだとした。後期の著作『生のあやうさ』(2004)や『戦争の枠組』(2009)では、すべての生命が持つ脆弱性に着目し、どの生が追悼に値するとされ、どの生が見えなくされるかという政治的問題を提起した。
【批判と継承】
バトラーの主張はフェミニズム内部からも批判を受けた。「女性」というカテゴリー自体を問い直すことは、女性の権利運動の基盤を掘り崩すのではないかという懸念である。しかしLGBTQ+の権利運動やノンバイナリーなアイデンティティの承認において、バトラーの理論は決定的な役割を果たしている。
【さらに学ぶために】
竹村和子『フェミニズム』(岩波新書)がジェンダー論への入門として読みやすい。「男らしさ」「女らしさ」とは何かを問い直すバトラーの視点は、日常の性別に関する固定観念を考え直すきっかけになる。
主な思想
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