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合理的な愚か者

ごうりてきなおろかもの

アマルティア・セン·現代

経済人モデルを批判し倫理学と再接合する論考集

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哲学経済学倫理学

この著作について

アマルティア・センが英語圏で発表した代表的な経済哲学論文を集めた邦訳論集。一九八九年に勁草書房から刊行され、自己利益最大化の経済人モデルを根本から問い直し、共感とコミットメントを意思決定の内側に位置づけた、経済学と倫理学の再接合の宣言書である。

【内容】

本書には、表題作「合理的な愚か者」をはじめ、リベラル・パラドックス、選択と道徳性、自由・全員一致・権利、福祉と能力、効用と平等といった主要論文が収録されている。標準的な経済学が前提とする首尾一貫した選好と自己利益最大化の像を、共感(他者の効用を自己の効用に取り込む動機)とコミットメント(自己の効用に反してでも価値判断にしたがう動機)の概念によって脱構築する。さらにアロー型の不可能性定理を、個人の権利を尊重するリベラル・パラドックスとして読み替え、福祉判断の基礎を能力アプローチへとひらいていく。

【影響と意義】

本書は、後年の人間開発指数や国連の人間の安全保障概念の理論的源流となり、ヌスバウムらケイパビリティ・アプローチの展開を支えた。行動経済学・厚生経済学・政治哲学の境界領域に決定的な刺激を与えた古典である。

【なぜ今読むか】

効率と最大化の語彙だけでは捉えきれない人間の選択を、感情と倫理を含めて理論化する手つきは、AI時代の意思決定論にとっても示唆に富む。経済学を倫理学として読み直したい読者にとって最良の入口となる。

著者

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