正
『正義のアイデア』
せいぎのあいであ
アマルティア・セン·現代
ロールズを批判的に継承した比較的正義論
哲学政治
この著作について
ノーベル経済学賞受賞者アマルティア・センが2009年に公刊した政治哲学書。『不平等の再検討』と並ぶセンの主著で、ロールズ『正義論』を批判的に継承しつつ独自の正義論を展開する。
【内容】
センはロールズ流の「理想的な制度設計としての正義」(超越論的制度主義)を批判し、現実の不正を一つひとつ比較検討して改善する「比較的アプローチ」を提案する。完全に正しい社会を先に定義する必要はなく、AがBより明らかに不正なら、Aを減らすことで正義は進む。インドの哲学伝統(ニーティとニヤーヤ)、社会選択理論、民主主義論、能力アプローチ(ケイパビリティ)が組み合わされ、実践的な正義論が構築される。
【影響と意義】
本書は正義論における現実主義・比較主義の代表的立場として、ヌスバウムやドゥオーキンと並ぶ現代政治哲学の重要貢献と見なされている。開発経済学と倫理学を架橋する視点は、開発政策・人権論・民主主義論にも広く影響を与えている。
【なぜ今読むか】
完璧な制度を待たずに、目の前の不正を少しでも減らす実践的思考こそ、現代の複雑な問題に向き合うための指針となる。