貧
『貧困と飢饉』
ひんこんとききん
アマルティア・セン·現代
飢饉を食糧不足ではなく権原の喪失として再定義したセンの画期的研究
経済社会
この著作について
インド出身の経済学者アマルティア・センが1981年に公刊した飢饉研究の記念碑的著作。1998年のノーベル経済学賞受賞の中心的根拠となった代表作で、飢饉を食糧総量の不足ではなく「食糧へアクセスする権原(entitlement)の喪失」として分析した画期的仕事である。
【内容】
1943年のベンガル飢饉、1973年のエチオピア飢饉、1974年のバングラデシュ飢饉、サヘル地域の飢饉を詳細に分析し、いずれの場合も国全体の食糧供給は十分あったにもかかわらず、特定集団(賃金労働者・漁民・遊牧民)が価格・失業・通貨・法制度の変動によって食糧を入手する「権原」を失ったことで飢餓が発生したと論証する。ロースキン以来のマルサス的人口論・食糧不足論を実証的に覆した。
【影響と意義】
開発経済学・人権論・公共政策論に不可欠の参照文献となり、国連の「食糧への権利」議論、現代の貧困統計・多次元指標、そしてヌスバウムと共に開発した「ケイパビリティ・アプローチ」の理論的出発点ともなった。
【なぜ今読むか】
気候変動による食糧危機と紛争が重なる現代、飢餓を構造的権利の問題として理解する必読書。