ド
『ドイツ悲劇の根源』
どいつひげきのこんげん
ヴァルター・ベンヤミン·現代
バロック悲劇を通じて寓意と断片の美学を確立した教授資格論文
哲学文学
この著作について
ヴァルター・ベンヤミン(Walter Benjamin)が1925年にフランクフルト大学に提出した教授資格論文で、1928年に単行本として刊行された(原題『Ursprung des deutschen Trauerspiels』)。受理されず大学人の道を閉ざされた経緯と、のちの『パサージュ論』『複製技術時代の芸術作品』の方法的基礎を用意した研究として二重に重要な書物である。
【内容】
認識論的序説では、概念は事物の平均ではなく布置(Konstellation)によって真理を提示するという独自の認識論が展開される。本論ではシェイクスピアやカルデロンに代表される古典悲劇(Tragödie)と、バロック期ドイツの三十年戦争下で生まれた「哀悼劇(Trauerspiel)」を厳密に区別する。哀悼劇は没落・廃墟・宮廷陰謀・寓意・断片を主題とし、象徴ではなく寓意(アレゴリー)を軸に展開する。歴史を意味充実の物語ではなく、破片が断層をなして沈殿する堆積として読み替える視線が、本書から生涯のベンヤミン思想を貫いていく。
【影響と意義】
アドルノ『否定弁証法』、アガンベン『スタンツェ』、ジジェクのイデオロギー論に至るまで、アレゴリー論・廃墟論・断片の詩学の原典として繰り返し参照されてきた。カルチュラル・スタディーズ、ポストコロニアル理論、メディア考古学の方法論的源流の一つでもある。
【なぜ今読むか】
断片と雑音の洪水のなかで意味をどう構成するかを問う現代の読者にとって、ベンヤミンの断片的認識論は古びた装いの下にきわめて今日的な武器を差し出す。
著者
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