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『これからの「正義」の話をしよう』

これからの せいぎの はなしを しよう

現代

ハーバード大学の人気講義から生まれた現代正義論の入門書

哲学

この著作について

マイケル・サンデルがハーバード大学で開講した人気講義をもとに2009年に刊行した、現代政治哲学・倫理学の入門的名著。

【内容】

暴走するトロッコで5人を助けるために1人を犠牲にしてよいかを問うトロッコ問題をはじめ、代理出産、同性婚、アファーマティブ・アクション、徴兵制、スポーツ選手の報酬といった現代の具体的な論争が次々に取り上げられる。それぞれの論点に対して、功利主義(ベンサム・ミル)、リバタリアニズム(ノージック)、カントの義務論、ロールズの正義論、アリストテレスの徳の倫理学という五つの立場がぶつけられ、最後にサンデル自身のコミュニタリアニズム(共通善を重視する立場)が提示される。

【影響と意義】

政治哲学を学術の外にいる読者へ広く普及させた功績は大きい。日本では、もとになった講義がNHK「ハーバード白熱教室」として放映され、本書もそれとともにベストセラーになった。複数の倫理的立場を相互批判のなかで提示する講義は、学生を議論に参加させるスタイルで進み、そのスタイルはNHKが制作したほかの「白熱教室」の番組にも引き継がれている。

【なぜ今読むか】

具体的な事例から哲学的原理へと議論を進める手際が鮮やかで、哲学に初めて触れる人でも楽しく読める。「自分ならどう答えるか」を考えながら読むと、身近な話題が一段深い問いに変わっていく。

さらに深く

【内容のあらまし】

本書はサンデルがハーバードで続けてきた講義「Justice」に合わせて書いた本である。第一段階の問いのひとつに、定番のトロッコ問題がある。ブレーキの効かないトロッコが五人を轢こうとしている。運転士のあなたが待避線へ進路を切り替えれば、そこにいる一人が代わりに犠牲になる。切り替えるべきか。続いて、橋の上の太った男を押し落として止めるべきかが問われる。多くの人は前者に頷き、後者には抵抗を覚える。この直観の差にサンデルは立ち止まる。

第二段階はベンサムとミルの功利主義である。最大多数の最大幸福という単純な原理が、救命ボートで漂流中に給仕の少年を殺して食べた船員たち、満足した豚と不満足なソクラテスといった事例で試され、何が量と質をなすのかが問われる。

第三段階はリバタリアニズムである。ノージックを引き、課税は強制労働か、自分の身体は自分のものかが議論される。臓器売買や合意の上の人食いといった事例で、自由意志に基づく契約の限界が浮かび上がる。続く「市場と道徳」の章では、徴兵制と志願兵制、代理出産が論じられる。

第四段階でカントの義務論が登場する。仮言命法と定言命法、人格を単なる手段としてではなく目的として扱うこと、嘘をついてはいけない理由などが、家に匿った友人の居場所を戸口の殺人者に尋ねられたらどうするかという思考実験で検討される。

第五段階でロールズの正義論が無知のヴェールとともに示され、機会の平等、格差原理が論じられる。マイケル・ジョーダンの収入は彼の才能の所有物か、社会的偶然の産物かという問いが、ロールズ読解の中心にある。続く章ではアファーマティブ・アクションが論じられる。

最終段階でアリストテレスとコミュニタリアニズムが登場する。フルートは誰に与えるべきかという例などを通じて、目的論的な徳の倫理が示される。アリストテレスの後には同性婚をめぐる論争などが扱われる。サンデル自身は、市場と契約だけでは決められない、共通善をめぐる公共の対話が必要だと説く。本書の最後で彼は読者に、隣人と意見を交わし、宗教や徳の語彙を恐れず公共の議論に持ち込むよう呼びかける。

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