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『イスラーム哲学の原像』
いすらーむてつがくのげんぞう
井筒俊彦《いづつとしひこ》·現代
井筒俊彦《いづつとしひこ》によるイスラム哲学入門の最高峰
哲学
この著作について
井筒俊彦《いづつとしひこ》が、イスラーム哲学の重厚な伝統を日本語の読者に開くために書き下ろした連続講義のエッセンスをまとめた、岩波文庫の定番書。
【内容】
本書はまず、コーランの一神教的世界観、ギリシア哲学とイスラーム神学が出会ったバグダードの翻訳運動、カラームと呼ばれる神学論争の成立から話を起こす。そのうえで、アル=キンディー、アル=ファーラービー、イブン・シーナー(アヴィセンナ)、アル=ガザーリー、イブン・ルシュド(アヴェロエス)、スフラワルディー、イブン・アラビーといった思想家が順に論じられ、存在と本質、知性、預言、神秘的合一、光の形而上学、一体化の経験という主題が立ち上がってくる。著者は日本語の語彙と東洋的感性を駆使して、西洋哲学とは別の論理で発展したイスラーム哲学の骨格を浮かび上がらせる。
【影響と意義】
日本におけるイスラーム哲学研究と東洋哲学の比較研究の出発点となった著作で、著者の『コーラン』『意識と本質』と合わせて、戦後日本思想史に独自の位置を占める。国際的にもアンリ・コルバンらの仕事と並ぶ貢献として評価されている。
【なぜ今読むか】
中東情勢や多文化共生のニュースで「イスラーム」が語られることは多いが、宗教政治ばかりが注目されがちである。本書は哲学的・精神的な深みからイスラームを知るための、静かだが力強い出発点となる。

