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コーラン(クルアーン)

ムハンマド·近代

神の言葉をムハンマドが伝えたイスラーム教の聖典

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文化・宗教

この著作について

預言者ムハンマドが受けた神の啓示を集成したイスラームの根本聖典。全114章(スーラ)からなり、世界で十数億の信徒の生の基盤をなす。

【内容】

7世紀のアラビア半島で、ムハンマドが約23年にわたって受け取ったとされる啓示が、アラビア語の荘厳な韻文で記されている。唯一神アッラーへの信仰、終末と最後の審判、礼拝・喜捨《きしゃ》・断食・巡礼といった実践、契約・相続・家族法などの社会規範が、神からの直接の語りかけとして並ぶ。聖書の物語を引き継ぎつつ独自の世界像を描き出す点も特徴である。

【影響と意義】

神学・法学(シャリーア)・哲学・文学・建築・カリグラフィーに至るイスラーム文明全体の源泉となった。イブン・シーナーイブン・ルシュドの哲学、スーフィズムの霊性、近現代の改革思想はすべて、この書の解釈をめぐる営みの延長にある。キリスト教ユダヤ教とも密接に結びつく一神教の到達点の一つである。

【なぜ今読むか】

世界の四人に一人が拠り所とする信仰の根源に、自らの目で触れられる希少な機会を与えてくれる。中東情勢や隣人となるムスリムを理解するための、避けて通れない一冊である。

さらに深く

【内容のあらまし】

『クルアーン』は全114章のスーラから成り、章はおおむね長いものから短いものへと並べられている。ただし伝承上の啓示の順序はそれとは別で、メッカ期に下された短い章と、メディナ期に下された長い章とが入り混じっている。冒頭に置かれた「開端章」は、慈悲深く慈愛あまねきアッラーへの賛美と導きへの祈りが、わずか七節で簡潔に唱えられる、礼拝で繰り返される短い章である。

メッカ期の章は短く、力強い韻を踏み、終末と最後の審判の場面を鮮烈な比喩で描き出す。山が綿のようにほぐれ、海が燃え、星が落ちる。人々は自らの行いを記した書物を渡され、右手で受け取る者と左手で受け取る者に分けられる。富や血縁が頼りにならない日として、その日のイメージが繰り返し提示され、聞く者に己の生を見直すよう促す。

メディナ期の章は長く、共同体の運営に関わる規範が増えてくる。礼拝の作法、断食の月、巡礼の手順、喜捨の比率が定められ、契約・遺言・相続・婚姻・離婚・刑罰など社会生活の細目が整えられていく。同時に、過去の預言者たちの物語が随所に挿入される。アダム、ノア、アブラハム、ヨセフ、モーセ、イエスといった旧約・新約の登場人物が次々に現れ、それぞれが唯一神への信仰を伝えた一連の使者として位置づけられる。ムハンマドはその系譜の最後を締めくくる「預言者の封印」とされる。

中盤の有名な「光の章」では、神の光が壁龕のなかの灯火、灯火を覆うガラスの輝きにたとえられ、信仰の内面性が詩的に描かれる。「夜の旅の章」では、ムハンマドがエルサレムまで一夜にして運ばれ、天界へ昇る伝承が語られる。最終章「人々の章」は、人間の心に囁く悪しきものから神に庇護を求める短い祈りで、巻全体がふたたび祈祷の調子で閉じられる。十数億の信徒が日々の礼拝で口にする言葉の総体として、読者にひとつの世界観の手ざわりを伝える書物である。

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