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道徳原理研究

どうとく げんり けんきゅう

ヒューム·近代

ヒュームの道徳哲学

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哲学

この著作について

デイヴィッド・ヒュームが若書きの人間本性論の第三部を、平易で洗練された文体に書き直した倫理学書で、本人が「最良の作品」と述べた円熟の一冊。

【内容】

道徳判断の根拠は理性による演繹ではなく、「同意や非難の感情を呼ぶか」という人間の共通感情にあると論じられる。仁愛、正義、忠誠、勤勉などの徳を分析し、それらが本人や他人にとって「有用である、もしくは快い」という理由によって是認されることを示す。とりわけ正義は所有・契約・政府といった社会制度の必要から生じた「人為的徳」として位置づけられ、功利主義的な社会倫理の枠組みが先取りされる。巻末の附録では、理性と感情の関係、徳と悪徳の定義、合意と効用の境界が補足される。

【影響と意義】

本書は十八世紀スコットランド啓蒙の倫理学の精華として、ベンサム、J・S・ミルの功利主義、アダム・スミスの道徳哲学に直接の道を開いた。二十世紀以降も、感情主義や徳倫理学、ケアの倫理など、理性中心ではない倫理学の潮流がしばしば本書に立ち戻っている。

【なぜ今読むか】

道徳的対立が理性的討論だけでは解けないと痛感される現代、「人はなぜ善悪を感じるのか」を感情と社会的有用性から冷静に分析した本書は、共感や連帯の倫理を考え直す出発点となる。

著者

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