「愛は技術である」
フロム現代
フロムが『愛するということ』で、愛は学んで身につける技術だと説いた言葉。
この言葉について
さらに深く
【出典】
精神分析家で社会哲学者のエーリッヒ・フロムが、1956年にニューヨークで出した『愛するということ』の主張である。原題は The Art of Loving で、ルース・ナンダ・アンシェン編集の叢書「世界の展望」の一冊として出た。第1章の題は「愛は技術か」で、フロムはここで、愛は大切だと思いながら、愛について学ぶことは何もないと考えている人々の態度を批判する。本文には、生きることが技術であるのと同じく、愛は技術であると自覚することが第一歩だ、という一文がある。英語では love is an art, just as living is an art(ラヴ・イズ・アン・アート、ジャスト・アズ・リヴィング・イズ・アン・アート)。日本語の「技術」は、この art の訳語である。
【よくある誤解】
「技術」という訳語から、この本を手軽なやり方を教えるハウツー本と取ると、フロム自身の断りと食い違う。最終章「愛の実践」の冒頭でフロムは、この章に自分でできるやり方の処方箋を期待する読者は、大いに失望するだろうと書いている。フロムによれば、愛の技術を身につけるには、規律、集中、忍耐を生活のあらゆる面で実践しなければならない。また本書は、個人の心がけだけを説く本でもない。フロムは、人々が恋愛を労働市場のように考え、自分の交換価値の限界を踏まえて、社会的価値の高い「お買い得」な相手を探していると批判した。第3章は、現代の西洋社会における愛の崩壊を論じている。
【この言葉のその後】
『愛するということ』は、数百万部を売るフロム最大のベストセラーになった。アメリカの新聞ワシントン・ポストは、この本が1960年代の大学キャンパスで大流行し、フロムが多くの学生の間で教祖のような存在になったと書いた。同時に、難しい仕事を広い読者向けにやさしく書く通俗化の書き手、というフロム像もこの本で強まった。刊行当時、左派の側からは、人を解放する性格の本ではないという批判も起きた。フロムは序文で、この本で述べる考えは、先に『自由からの逃走』などで示した考えと似ていると述べている。ドイツ語訳も、とりわけ1960年代のドイツで広く読まれた。
この言葉を残した人物
フロムのほかの名言
「愛」の名言
「汝の隣人を愛せよ」
イエスが神への愛に次ぐ第二の戒めとして、旧約聖書レビ記の句を引いて示した言葉。
「君がぼくをなつかせたら、ぼくたちは互いに相手が必要になる」
サン=テグジュペリの『星の王子さま』第21章で、キツネが王子に絆の意味を教える台詞。
「苦しみを通してしか、本当に愛することはできない」
ドストエフスキーの短編「おかしな人間の夢」で、主人公が地上の愛は苦しみと切り離せないと語る一節。
「大切なものは、目に見えない」
サン=テグジュペリの『星の王子さま』で、キツネが王子に別れ際に秘密として教える言葉。
「仁とは人を愛することである」
『論語』顔淵篇で、弟子の樊遅に仁とは何かと問われた孔子が答えた言葉。
「他者の苦しみへの共苦こそが道徳の基盤である」
ショーペンハウアーが『道徳の基礎について』で、共苦こそ道徳の土台だと説いた主張を短くまとめた言葉。