「私には夢がある」
キング牧師現代
キング牧師が1963年のワシントン大行進の演説で、人種差別の撤廃と平等を訴えた言葉。
この言葉について
さらに深く
【出典】
1963年8月28日、首都ワシントンで行われた「雇用と自由のためのワシントン大行進」で、バプテスト派の牧師キングがリンカーン記念堂の階段から語った演説の一節である。スタンフォード大学キング研究所によれば、参加者は20万人を超えた。原文は英語の I have a dream(アイ・ハヴ・ア・ドリーム)。終盤でキングは用意した原稿を離れ、夢を主題に即興で結びを語った。その直前、後ろの席にいたゴスペル歌手マヘリア・ジャクソンが「みんなに夢のことを話して、マーティン」と声をかけている。夢の繰り返し自体も初出ではない。1962年11月にノースカロライナ州ロッキーマウントの高校で、1963年6月にはデトロイトのコボ・ホールで、同じ繰り返しを含む演説をしていた。
【よくある誤解】
この演説を穏やかな理想の表明としてだけ読むと、前半の中心を見落とす。前半にあるのは、夢ではなく告発である。キングは、アメリカが掲げた約束を「約束手形」にたとえ、アメリカは黒人に「不渡りの小切手」を渡したと述べ、自分たちはその小切手を換金しに来たのだと語った。行進の名に「雇用」が入っているとおり、キングが求めたのは市民的権利だけでなく経済的権利でもあり、法による人種差別の撤廃だった。
【この言葉のその後】
スタンフォード大学キング研究所は、1964年の公民権法と1965年の投票権法の規定に、この行進の要求が反映されていると記している。演説そのものの評価も高く、1999年に行われた演説研究者への調査では、20世紀アメリカの演説の第1位に選ばれた。2002年には議会図書館が録音を国家録音登録簿に加え、演説が行われたリンカーン記念堂の階段には、その場所を記す刻銘がある。一方で、この演説は誰でも自由に使える文章ではない。演説の時点では、原稿は著作権の登録に出されていなかった。ラジオとテレビで広く放送されたことで、演説が公表にあたり誰でも使えるものになったのかが争われた。1999年の控訴審は、演説をしたことは公表ではなく上演だと判断し、当事者はその後和解した。米国では2038年まで著作権が続く。
この言葉を残した人物
「自由」の名言
「人間は生まれながらにして自由である、しかしいたるところで鎖につながれている」
ルソーが『社会契約論』第1編第1章の書き出しで、自由と拘束の矛盾を示した言葉。
「人は女に生まれるのではない、女になるのだ」
ボーヴォワールが『第二の性』第2巻の冒頭で、女性のあり方は作られると示した一文。
「自分自身の知性を使う勇気を持て」
カントが論文「啓蒙とは何かという問いへの答え」で、啓蒙の標語として掲げた言葉。
「簡素に、簡素に、簡素に生きよ」
ソローが『森の生活』で、用事を減らして生活の本質に向き合う暮らしを説いた一節。
「他人に不正をはたらく手先になれと求める法なら、法を破れ」
ソローが論考『市民の反抗』で、人を不正の手先にさせる法なら破れと説いた一文。
「人間は自由の刑に処せられている」
サルトルが『実存主義とは何か』で、言い訳なしに選び続ける人間の条件を表した言葉。