
エイブラハム・リンカーン
Abraham Lincoln
1809年 — 1865年
奴隷解放を実現したアメリカ第16代大統領
この人物について
「人民の、人民による、人民のための政治」を掲げた民主主義の象徴であり、アメリカ合衆国第16代大統領。
【代表的な著書・業績】
1863年の奴隷解放宣言は南部諸州の奴隷を自由とする歴史的な大統領令であり、同年のゲティスバーグ演説は民主主義の理念を270語あまりに凝縮した歴史的名演説として刻まれている。南北戦争を指揮して合衆国の統一を維持し内戦を終結に導き、修正第13条による奴隷制廃止の憲法化まで進めた。弁護士・州議会議員を経て大統領に就任した経歴を持つ。
【思想・考え方】
すべての人間は平等に造られているという独立宣言の理念を、現実の政治的手腕によって実践へと移した。奴隷制を道徳的悪と見なしつつも、連邦の維持と漸進的な廃止を両立させる現実的理想主義を貫いた。民主主義を単なる制度ではなく、自由を拡大し続ける不断の実験として捉え、その継続性を国家の使命として語った。
【特徴的な点】
丸太小屋から大統領へという立身出世の物語はアメリカン・ドリームの原型となり、独学で法律を学び、卓越した弁論術を身につけた。内戦中の苦悩と決断は後世の政治家の手本とされる。
【現代との接点】
人種平等、民主主義、リーダーシップをめぐる議論において常に参照される存在であり、分断の時代における統合の象徴として今も語られる。
さらに深く
【生涯と行動】
エイブラハム・リンカーン(1809〜1865)は、ケンタッキー州の開拓民の丸太小屋に生まれた。正規の学校教育は一年に満たないとされ、借りた書物で独学を重ね、測量士、郵便局員、雑貨店店員を経て弁護士となった。1858年のダグラスとの上院議員選挙での連続討論は、奴隷制の道徳的是非を政治の中心に据える歴史的論戦となった。1860年に共和党から第16代大統領に当選すると、南部諸州の連邦離脱と南北戦争に直面した。4年間の総力戦を指導しながら、1863年に奴隷解放宣言を発し、1865年4月、再選を果たして間もなくフォード劇場で凶弾に倒れた。
【政治思想の核心】
独立宣言の「すべての人間は平等に造られている」を合衆国の建国原理として再定位し、憲法をその実現のための可変的な装置と見なした点に、リンカーンの思想的独創がある。奴隷制を道徳的悪と断じつつ、連邦維持と漸進的廃止のあいだで精緻な均衡を取った姿勢は、理念と手段の関係をめぐる政治哲学の実践的回答であった。ゲティスバーグ演説での「人民の、人民による、人民のための政治」は、民主主義を完成した制度ではなく継続的な再献身の過程として定式化した。第二次就任演説の「悪意なく、万人への慈愛をもって」は、勝者が敗者に向ける倫理の古典的表現である。
【影響と評価】
奴隷解放と連邦維持という二重の功績により、合衆国の歴史上ワシントンと並ぶ象徴的存在となった。南部再建の未完と人種差別の温存という限界を指摘する修正主義の研究も積み重ねられているが、分断された社会を言葉によって統合しようとしたリンカーン的修辞は、現代の民主主義論においても基準点であり続けている。
【さらに学ぶために】
『リンカーン演説集』でその思想に直接触れることができる。分断の時代に統合を目指すリンカーンのリーダーシップは、現代にも多くの示唆を与えてくれる。
主な思想
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