女
『女性と人間開発』
じょせいとにんげんかいはつ
マーサ・ヌスバウム·現代
ケイパビリティ・アプローチをグローバル正義に応用したヌスバウムの代表作
政治フェミニズム
この著作について
シカゴ大学の哲学者マーサ・ヌスバウムが2000年に公刊した、ケイパビリティ・アプローチの理論的・実践的展開の集大成である。原題は『Women and Human Development: The Capabilities Approach』。
【内容】
アマルティア・センと共同で発展させたケイパビリティ・アプローチを、ヌスバウムは普遍的な正義論として再構築する。本書は、すべての人間が尊厳ある生を送るために必要な「中心的人間ケイパビリティ」を10項目(生命、身体的健康、身体的不可侵性、感覚・想像力・思考、感情、実践理性、連帯、他種との関係、遊び、自分の環境のコントロール)として定式化する。インドのジェンダー不平等、家庭内暴力、教育・労働へのアクセスの欠如を膨大なフィールドワークで描き、各ケイパビリティの最低閾値が政治的義務として保障されるべきだと論じる。アリストテレスの徳論とカントの人格尊重、現代フェミニズムを統合した壮大な試みである。
【影響と意義】
国連開発計画(UNDP)の人間開発指数の理論的基盤となり、貧困・教育・ジェンダー政策の国際的議論を刷新した。リベラリズム、ロールズ正義論への重要な対案として、現代政治哲学の中心文献の一つに数えられる。
【なぜ今読むか】
グローバル化と格差の拡大のなか、所得や効用ではなく「実際に何ができるか」から正義を測るケイパビリティ・アプローチの強みは、いま決定的に重要である。