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統治二論

とうちにろん

ロック·近代

自然権と社会契約に基づく立憲政治の理論

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政治

この著作について

名誉革命の前後に執筆され、17世紀末に匿名で公刊されたロックの政治哲学の主著。

【内容】

二つの論文から成る。第一論では、当時の王権神授論を逐条的に批判し、アダムに由来するとされる父権的絶対王権の論拠を解体する。第二論はロック自身の積極的な政治理論で、人類の自然状態を「完全な自由と平等」の状態として描き、自然法のもとで自己と他者の生命・自由・財産を尊重する義務を導き出す。労働によって所有権が発生し、貨幣の導入で不平等が正当化され、人びとの同意によって政治社会が成立し、政府は信託として立法権と執行権を担う、という筋道が説かれる。信託違反の場合の抵抗権も明確に認められている。

【影響と意義】

権力の源泉を人民の同意に据え、抵抗権を正面から承認する点で、ホッブズの絶対主権論と好対照をなす。アメリカ独立宣言の「生命・自由・幸福追求」の権利概念、フランス人権宣言、現代の立憲主義と人権思想の共通の源泉となった。ノージックからロールズまで、現代の政治哲学がほぼ必ず参照する古典である。

【なぜ今読むか】

「なぜ政府に従い、いつ従わなくてよいか」という原理的な問いに、今も通用する論理を与えてくれる。民主主義の揺らぎが語られる時代に立ち返るべき基礎文献。

さらに深く

【内容のあらまし】

第一論はロバート・フィルマーの家父長論への逐条批判である。フィルマーは旧約聖書のアダムが神から世界全体への支配権を授かり、その権利が長子継承で世襲されてきたから、現在の君主たちはアダムの正当な後継者であると論じていた。ロックは聖書解釈と歴史的考察を重ねて、アダムが神から与えられたのは妻と子への家父長としての権限であって支配権ではないこと、たとえ支配権だったとしてもどの王が正当な後継者であるかを確定する手段がないことを次々と示す。父権と政治権力は本性が異なる、と結論する。

第二論はロックの積極的政治理論である。第二章は自然状態の描写から始まる。すべての人は完全な自由と平等を享受し、誰も他者の生命・健康・自由・所有を傷つけてはならない、という自然法に従って生きている。自然状態は戦争状態ではない。両者を混同したのがホッブズの誤りである、と。

第五章「所有について」は本書最大の独創を含む。地球は神が人類全員に共有のものとして与えた。しかし人が自分の身体に対しては所有権を持つ以上、その身体を労働として混入させた対象には所有権が成立する。これが所有の起源である。当初は「他の人にも十分なだけ残っていること」と「腐らせないこと」という二つの制限のもとに所有が成立していたが、貨幣の発明により腐敗の制限が外れ、土地と富の不均等な蓄積が同意のもとで正当化された、と論じられる。

第七章から第九章では政治社会の起源が語られる。自然状態には不便がある。自然法を解釈する裁判官がおらず、執行する公権力もない。これらの不便を除くために、人々は同意によって政治社会を結び、立法権と執行権を信託する。第十一章から第十四章は権力分立の原型である。立法権は最高だが、それも国民から信託されたものであり、勝手に独占できない。執行権は立法権に従属するが、議会が閉会中の例外的事態には特権を行使する。

第十九章「政府の解体について」が政治的爆弾となった。立法権が信託に違反して恣意的に国民の生命・自由・財産を侵害したとき、政府は解体される。最終裁判官は天であり、すなわち国民が抵抗権を行使する根拠は神と歴史の前に立つ国民自身にある、と説かれる。革命権の哲学的正当化がここに完成する。

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