『国家と革命』
こっかとかくめい
レーニン·現代
プロレタリア独裁と国家死滅を論じたマルクス主義政治論の古典
この著作について
レーニンが1917年、ロシア革命の前夜にフィンランドの隠れ家で書き上げたマルクス主義国家論の綱領的著作。十月革命直前にペトログラードへ戻ったため結論部は未完に終わったが、革命後まもなく公刊された。
【内容】
本書でレーニンはマルクスとエンゲルスの著作を精緻に読み直し、国家は階級支配の道具であり、プロレタリアートは既存の国家機構を単に奪取するのではなく「粉砕」しなければならないと主張する。プロレタリアート独裁の段階で新しい半国家が打ち立てられ、共産主義社会の完成とともにそれは「死滅」していく。このとき官僚制と常備軍は解体され、武装した人民が自ら統治に参加する民主主義の最高形態が実現する、とされる。
【影響と意義】
20世紀の革命運動に決定的な影響を与えた書物で、ソビエト政権の正統性を裏付ける理論的柱となった。と同時に、現実の社会主義国家が官僚機構を肥大化させたことで、本書の理想との落差が繰り返し批判の的となってきた。
【なぜ今読むか】
国家の本質を階級支配として見る鋭い切り口と、その死滅というユートピア的帰結のあいだの緊張は、国家の役割を問い直す現代の議論にも示唆を与える。批判的に読む古典の好例。
さらに深く
【内容のあらまし】
本書は一九一七年八月、ペトログラードの混乱を逃れてフィンランドのラズリヴに身を潜めたレーニンが、藁葺き小屋と湖畔で書き上げた論文である。冒頭で彼は、マルクスとエンゲルスの国家論が機会主義的な社会民主主義者によって去勢されてきたと宣言し、引用と注釈の手法で「真のマルクス」を取り戻そうと試みる。
第一章は『ゴータ綱領批判』『フランスにおける内乱』『家族・私有財産および国家の起源』など主要文献の精読である。国家は階級対立の和解不可能性から生まれた特殊な力であり、支配階級が被支配階級を抑え込むための機関にほかならないと押さえる。続く章でパリ・コミューンの経験が分析される。コミューンは官吏を選挙で選び、いつでも罷免でき、給与を労働者並みに抑え、常備軍を武装した人民で置き換えた。レーニンはこれを「既成の国家機構を粉砕する」具体例として読み、議会制を温存したまま社会主義に移行できるとするカウツキーの立場を厳しく批判する。
中盤でプロレタリアート独裁の段階が描かれる。プロレタリアートは権力を奪取したのち、ブルジョア国家を破壊し、自らの国家を樹立する。ただしこの新しい国家は、すでに「半国家」であり、武装した労働者大衆そのものに溶け込んでいる。会計と統制の業務はあらゆる識字者が交代で担えるほど単純化されるべきだ、とレーニンは大胆に論じる。
終盤に進むと、共産主義社会の二つの段階の議論となる。ブルジョア的権利の痕跡が残る低い段階では「能力に応じて働き、労働に応じて受け取る」が、生産力が発達し人間が労働を生活の第一の欲求とする高次段階では「能力に応じて働き、必要に応じて受け取る」原理が実現する。そのとき強制装置としての国家は不要になり、漸進的に死滅する。本書の本来の最終章は十月革命の勃発で中断された。レーニンは「革命の経験は書物より教訓に富む」と書き残し、ペトログラードへ戻っていく。
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