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プルーストとシーニュ

ジル・ドゥルーズ·現代

『失われた時を求めて』を記号の学習の物語として読むドゥルーズ初期の名著

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哲学文学

この著作について

ジル・ドゥルーズ(Gilles Deleuze)が1964年に初版を刊行し、1970年および1976年に大幅に増補改訂した文学論(原題『Proust et les signes』)。マルセル・プルースト失われた時を求めての全篇を、記号(signes)との出会いと学習の物語として読み解いた独創的な読解書で、ドゥルーズ初期の代表作に数えられる。

【内容】

本書は、『失われた時を求めて』を時間や記憶の小説としてではなく、主人公が次々と出会う記号を読み解く苦痛な見習い修行の物語として読み替える。ドゥルーズは記号を四つの層に区別する。まず社交界の空虚な記号があり、次に愛する者(とりわけアルベルチーヌ)の嘘と嫉妬を生む感覚的記号がある。その上に感覚的記号があり、マドレーヌの味やゲルマントの敷石のつまずきが過去を呼び起こす。最上位には芸術の記号があり、前三者の真理をはじめて明かす。増補版では、反ロゴス中心主義的な機械・横断性・反記憶の主題が追加され、のちのアンチ・オイディプスの理論装置の萌芽が現れる。

【影響と意義】

本書はロラン・バルトS/Z、ジュリア・クリステヴァの間テクスト性論、マロリー・クリシェ、アンヌ・シモンら現代プルースト研究に直接の影響を与えた。ドゥルーズ自身の意味の論理学差異と反復におけるシミュラークル論・系列論の具体的応用例としても読める。

【なぜ今読むか】

アルゴリズムが記号を翻訳する時代に、読むという経験がなお学習と生成の現場であることを思い出させる文学論の古典として、本書は静かな輝きを保っている。

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