S
『S/Z』
ロラン・バルト·現代
バルザックの短編を五つのコードで解体したバルトのテクスト分析
哲学文学
この著作について
ロラン・バルト(Roland Barthes)が1970年に刊行した文学理論の主著(原題『S/Z』)。バルトが「読める作品」から「書ける作品」への転換を画定した記念碑的テクストである。
【内容】
バルザックの中編『サラジーヌ』一篇を素材に、本文を561の語彙単位(レクシー)に分割し、各単位を五つのコード(解釈コード・意味素コード・象徴コード・行為コード・文化コード)の網目として読み解く。伝統的な文学批評が作品を完結した単一の意味として消費するのに対し、バルトは多元的で複数的なテクストの織物を顕在化させる。「S」(サラジーヌ)と「Z」(去勢された歌手ザンビネッラ)が斜線で引き裂かれる表題は、意味が固定的な対立ではなく、絶えざる差異の運動であることを象徴している。実験的レイアウトと百二十以上の断章的註解が本文と並行し、読むことと書くことの境界を物質的に揺るがす書物的企てでもある。
【影響と意義】
本書は構造主義からポスト構造主義への移行を画する記念碑であり、ジェラール・ジュネットのナラトロジー、クリステヴァの間テクスト性、デリダの散種論と並んで、テクスト理論の出発点を形成した。現代のカルチュラル・スタディーズ、クィア批評、デジタル人文学のテクスト分析にもその方法が継承されている。
【なぜ今読むか】
SNSのタイムライン、生成AIの連想、マルチモーダルなコンテンツが溢れる現在、読むとは単一の意味を受け取ることではなく、複数のコードの交差を辿ることだというバルトの見方はかえって新鮮である。
著者
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