迷
『迷える者への導き』
まよえるもののみちびき
モーセス・マイモニデス·中世
ユダヤ教信仰とアリストテレス哲学を統合する中世ユダヤ思想の最高傑作
宗教哲学
この著作について
コルドバ生まれのユダヤ哲学者・医学者モーセス・マイモニデス(モーシェ・ベン・マイモーン、1135〜1204)が、エジプトでアラビア語で執筆した中世ユダヤ哲学の最高傑作(原題『Dalālat al-Hāʾirīn』)。日本語訳は岩波文庫所収。
【内容】
聖書とタルムードを字義どおりに読むと哲学的合理性と矛盾するように見える箇所について、寓意的解釈を施し、信仰と理性の調和を試みる三部構成の大著である。第一部は神の属性論(否定神学)と聖書中の擬人的表現の解釈、第二部は世界の創造と預言の哲学、第三部は神の摂理・悪の問題・律法の理由と説いて全体を結ぶ。アリストテレス哲学とアル=ファーラビー、イブン・スィーナーらイスラーム哲学の成果を踏まえつつ、モーセ五書と預言者書の整合的読解を提示する。
【影響と意義】
アラビア語からヘブライ語・ラテン語へと翻訳され、トマス・アクィナス、ドゥンス・スコトゥス、エックハルトらラテン中世スコラ哲学に大きな影響を与えた。スピノザは『神学・政治論』で本書に明示的に言及し、近代聖書批評と神学の関係をめぐる議論の出発点ともなった。
【なぜ今読むか】
科学と宗教、合理と信仰の関係をめぐる長い対話の歴史において、最も精緻な中世的回答を提供する古典として読む価値がある。