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『スピノザ 実践の哲学』
すぴのざ じっせんのてつがく
ジル・ドゥルーズ·現代
情動と身体の力能からスピノザを読み替えたドゥルーズの簡潔な入門書
哲学
この著作について
ジル・ドゥルーズ(Gilles Deleuze)が1970年に刊行し、1981年に増補改訂した小著(原題『Spinoza: Philosophie pratique』)。ドゥルーズ自身の主著『スピノザと表現の問題』(1968)の難解な理論を、より広い読者に向けて手短に提示した、実質的なドゥルーズ版スピノザ入門である。
【内容】
本書は五章構成をとる。第一章はスピノザの生涯と哲学者としての倫理姿勢を、破門・隠遁・レンズ研磨・独居といった具体的な生の形式から描き出す。第二章は『エチカ』を公理・定理からではなく、随所に挟まれた附録・スコリア(注解)から読むという独特の方法論を提案する。第三章はスピノザ哲学の鍵概念を辞書形式で順に解説し、共通概念・情動・能動的喜び・受動的悲しみ・必然性・力能・徳といった用語の内在的連関が示される。第四章は「悲しみの哲学者」としての伝統的スピノザ像を解体し、むしろ情動の増大と結合の哲学として再提示する。第五章では倫理が道徳と厳密に区別され、外在的裁きから内在的力能の構成への転換が論じられる。
【影響と意義】
本書は英語圏でも四十年以上にわたり哲学入門の定番として読まれ続け、アントニオ・ネグリ『野生のアノマリー』、マイケル・ハート、ジェネヴィエーヴ・ロイドら現代スピノザ読解の系譜に直接の影響を残した。『千のプラトー』『シネマ』へと続くドゥルーズ後期思想の鍵となる情動論と身体論の定式化が、ここにもっとも簡潔な形で示されている。
【なぜ今読むか】
身体・情動・ケアが人文社会科学の主題となる時代に、それらを真面目に考える出発点として、本書ほど短く深い入門は他にない。
著者
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