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解

『解釈の葛藤』

かいしゃくのかっとう

現代

現代解釈学の見取り図を示すリクール中期の論集

哲学

この著作について

ポール・リクールが1969年に公刊した論集。副題は「解釈学試論集」。現象学、精神分析、構造主義、宗教現象学など当時の人文諸科学の解釈理論を一望しつつ、それらのあいだの葛藤を通してリクール独自の解釈哲学を組み立てる重要著作である。

【内容】

全22論文を収録。ハイデガー的な存在論的解釈学、フッサールの現象学、フロイトの夢分析、レヴィ=ストロースの構造主義、レヴィナスの他者論、ブルトマンの非神話化解釈を、たがいに照らし合わせながら批判的に総合する。テキストを読むとは単に著者の意図を再生することではなく、テキストが開く「世界」のなかに自己を差し向け直すことだ、というリクール解釈学の中心テーゼがここで明確な形をとる。

【影響と意義】

「懐疑の解釈学」と「信頼の解釈学」という対比は、本書から神学・聖書学・文学批評・心理学に広く伝播し、現代解釈学の標準的な見取り図となった。ハーバーマス、ガダマーとの対話のなかで、以後のリクール3巻本『時間と物語』への理論的前提を用意した。

【なぜ今読むか】

情報があふれ解釈が政治化する時代に、「読む」とは何かを原理的に考え直したい読者に効く。一論文ごとに独立して読めるため、入口としても使いやすい。

さらに深く

【内容のあらまし】

本書は、大半が1960年から69年に雑誌や論集に発表された論文を集めたもので、初版はスイユ社が1969年に出した507ページである。版元はこれを、人間科学が解釈の従来の枠組みを壊し、解釈の葛藤そのものを生んだ1960年代の知的な熱気を帯びた論集だと紹介し、リクールは言語学、記号学、民族学、精神分析をたどって、その葛藤がなぜ、どう生まれるかを測るのだと述べる。2013年のポワン版の目次では、巻頭の1篇のあとに五つの部が続き、全22篇になる。

巻頭の「実存と解釈学」は、解釈学の起源、現象学への接ぎ木、意味論の平面、反省の平面、実存の段階という五節からなる。リクールは、解釈学を現象学に接ぎ木する道をハイデガーとは別のやり方で探る。ハイデガーは、人間科学が示す人間の条件の解釈を派生的なものと見なし、自分自身の世界内存在を通して開かれる実存の構造の分析を求めた。リクールはそれを短い道と呼んで退け、ほかの学問が示す、多様でときに対立し合う解釈を通り抜ける長い道を選ぶ。解釈とは、見かけの意味のうちに隠れた意味を読み解き、字義どおりの意味に含まれる意味の層を展開する思考の働きだとされ、宗教現象学が示す宇宙的な象徴、精神分析が示す欲望の象徴性、文学や芸術の象徴形式がその行程に置かれる。

第一部「解釈学と構造主義」の3篇は構造主義と向き合う。リクールは構造分析を探究の方法としては取り入れる。だがそれが主観なき客観性の理論、彼の言う超越論的主観のない超越論哲学を名乗るとき、道を誤ると批判する。第二部「解釈学と精神分析」は「意識と無意識」に始まる5篇で、「精神分析と現代文化の運動」にはマルクス、ニーチェ、フロイトと題した節がある。リクールは、フロイトを論じた別の著作で、この三人を懐疑の巨匠と呼んだ。第三部「解釈学と現象学」はナベール、ハイデガー、記号学を扱う3篇である。

第四部「悪の象徴論の解釈」は、原罪という語の意味を問う論考、2篇の「象徴の解釈学と哲学的反省」、「告発の非神話化」、「刑罰の神話の解釈」の5篇である。悪の起源と終わりを語る象徴と神話の言葉は、『悪のシンボリズム』の主題でもあり、その本は象徴は思考を生むという一句で知られる。第五部「宗教と信仰」は「ブルトマン序文」「希望に照らした自由」「罪責、倫理、宗教」「宗教、無神論、信仰」と続き、「父性、幻想から象徴へ」が全巻を閉じる。版元の紹介文はこの歩みを、近道を退け、解釈学の問題の出発点となった聖書釈義や宗教の諸学も通る長い分析の迂回を経て、はじめて実存の観念にふたたび受け入れうる意味を与えようとする試みとしてまとめている。

著者

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