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現代西洋

ヨーゼフ・シュンペーター

Joseph Schumpeter

1883年1950年

「創造的破壊」を提唱したイノベーション論の祖

創造的破壊イノベーション企業家精神
シュンペーター

この人物について

資本主義の本質をイノベーションに見出した先見的経済学者。オーストリア学派の出身でハーバード大学でも教鞭を執った。

【代表的な著書・業績】

1912年の経済発展の理論は企業家とイノベーションの経済的役割を論じた主著であり、ワルラス的静態経済からの動態的離脱を理論化した。1942年の資本主義・社会主義・民主主義は資本主義の自壊的傾向と民主主義論を展開した代表作で、死後に刊行された経済分析の歴史は経済思想史の大著である。オーストリア蔵相・銀行頭取の経験も持つ実務家であった。

【思想・考え方】

経済発展の原動力は、企業家(アントレプレナー)による「新結合」すなわちイノベーションであると論じた。既存の産業構造を破壊しながら新しい価値を創造する「創造的破壊」こそが資本主義の本質であり、静態的な均衡よりも動態的な変動にこそ経済の真の姿があるとした。信用創造による先行的な投資が経済発展を可能にするという銀行・金融観も独自である。

【特徴的な点】

資本主義の成功そのものが官僚化と知識人の批判を招き、やがて社会主義に移行するという逆説的予測を行った。若き日に「経済学の大家・ウィーンの名騎手・最良の恋人の三者を目指した」と語るほどの自負の持ち主だった。

【現代との接点】

スタートアップ文化、デジタル変革、プラットフォーム経済の分析に不可欠な理論的基盤となっている。

さらに深く

【生涯と業績】

ヨーゼフ・シュンペーター(1883〜1950)は、オーストリア=ハンガリー帝国のモラヴィア地方トリーシュに織物工場主の家に生まれた。幼くして父を失い、母の再婚先であるウィーンの高等軍人貴族の教育環境で育った。ウィーン大学で法学博士を取得しつつ、ベーム=バヴェルクとヴィーザーのオーストリア学派で経済理論を鍛え、23歳で理論経済学の本質と主要内容を上梓した。エジプトでの弁護士経験、チェルノヴィッツ大学とグラーツ大学の教授職、1919年のオーストリア共和国蔵相、ビーダーマン銀行頭取としての破産を経て、1932年にハーバード大学に定着し、サミュエルソン、トービン、ガルブレイスら次世代経済学者を育てた。優れた経済学者、優れた乗馬家、優れた恋人の三つになりたかったが乗馬だけは未達だったという述懐が残る。

【経済思想の核心】

ワルラス的一般均衡を静態と見なし、資本主義の本質を均衡からの逸脱としての動態、すなわち「創造的破壊」のうちに捉えた点にシュンペーターの独創がある。『経済発展の理論』は、新商品、新生産方法、新市場、新資源、新組織という五つの「新結合」を遂行する企業家こそが経済発展の原動力であり、銀行信用による購買力創造がそれを支えると論じた。『資本主義・社会主義・民主主義』では、資本主義の制度的成功そのものが大企業体制と知識人の批判文化を生み、やがて自己解体して社会主義へ移行するという逆説的予測を展開した。同書の民主主義理論は、民主主義を指導者選択の競争的手続きと定義し、熟議民主主義への古典的挑戦として今も参照される。

【影響と継承】

社会主義への収斂予測は外れたが、創造的破壊の概念は現代の経営論・イノベーション研究の基本語彙となった。ドラッカーのマネジメント論、クリステンセンの破壊的イノベーション論、進化経済学、国家イノベーションシステム論はいずれも、この源流に遡る。GAFAやAIスタートアップの興亡はシュンペーター的動態の現代的実例である。

【さらに学ぶために】

根井雅弘《ねいまさひろ》シュンペーター:企業者精神・新結合・創造的破壊とは何か(講談社学術文庫)が入門に適している。なぜ変化が必要なのかを考えるとき、シュンペーターの視点は不可欠である。

主な思想

対立する哲学者

関連する出来事

関連する著作

著作資本主義・社会主義・民主主義

資本主義の内的崩壊過程と社会主義への移行、民主主義のエリート論的解釈を論じた、経済学と政治哲学にまたがる古典的大著

著作経済発展の理論

「創造的破壊」と企業家の革新を経済学に導入したシュンペーター前期の主著

著作経済分析の歴史

古代から20世紀半ばまでの経済学史を俯瞰するシュンペーター遺作

著作理論経済学の本質と主要内容

若きシュンペーターによる一般均衡理論の体系的紹介

著作シュンペーター根井雅弘《ねいまさひろ》

シュンペーターの経済思想を解説した入門書

著作シュンペーター:孤高の経済学者伊東光晴《いとうみつはる》・根井雅弘《ねいまさひろ》

近代経済思想史からシュンペーターを再発見する定番評伝

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