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プラグマティズム

ウィリアム・ジェイムズ·現代

真理を実践的有用性から捉え直したアメリカ哲学の代表作

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哲学

この著作について

ハーバード大学の心理学者・哲学者ウィリアム・ジェイムズが1906年から1907年にかけてボストンとコロンビア大学で行った講演を書物化した、プラグマティズム哲学の古典的入門。

【内容】

全8講義。冒頭でジェイムズは、哲学上の立場の違いは論理よりも「気質」の違いに根ざすと指摘し、経験論合理論唯物論観念論といった伝統的対立を実際的な結果に還元しようとする。プラグマティズムの核となるのは、ある観念が真かどうかは、それを信じて生きることで現実に違いを生むかという基準である。真理は固定した実在との対応ではなく、信念の束に組み込まれ行動を導くかどうか、という機能的性格で捉え直される。宗教的信仰も、それが生きるうえで有用であれば正当な選択肢として許容される。

【影響と意義】

先行するパースの論理中心的なプラグマティズムを、倫理と生の次元に大胆に広げた点で独創的だった。アメリカ哲学の独自性を世界に知らしめる一冊となり、デューイの道具主義、ローティの新プラグマティズムへと発展し、現代の実践哲学にも大きな影響を与え続けている。

【なぜ今読むか】

講演録ゆえの平明さで、哲学の入門書としても優れている。「この哲学は生活に何の役に立つのか」という素朴な疑問に正面から答える姿勢が清々しく、抽象論に疲れたときにちょうどよい一冊。

さらに深く

【内容のあらまし】

第1講「現代のジレンマ」でジェイムズは、聴衆に二種類の哲学的気質を提示する。事実を重んじ多元的で経験を尊ぶ「タフ・マインデッド」と、原理を重んじ一元的で抽象を愛する「テンダー・マインデッド」だ。前者の科学的精神と後者の宗教的要求を、人びとは引き裂かれて生きている。プラグマティズムはこの裂け目に橋を架ける哲学だ、と宣言される。

第2講で「プラグマティズムが意味するもの」が説明される。リスのまわりを人が一周するとき、リスもまた人を背に向け続ける場合に、人はリスを「まわった」と言えるか。語の定義によって答えは変わる、というジェイムズの実例で、観念の意味はそれが導く実際の経験的差異に尽きる、と示される。先行するパースの格率を継承しつつ、彼はこれを真理論にまで広げていく。

第3講以降では、形而上学の伝統的問題が一つひとつ実用主義の篩にかけられる。「世界はひとつか多か」「物質か精神か」「自由か必然か」。これらの対立を、信じることが生のなかで生む違いに還元すれば、相互排他的に見えた選択肢が穏やかに整理され直す。

第6講「真理のプラグマティズム的観念」が中心の議論である。真理は固定された実在のコピーではなく、信念が経験のなかで他の信念と衝突せず、行動を導き、検証に耐え、新しい経験を予期させる「うまく働く」性質である。真理は静的属性ではなく、観念に「起こる」プロセスだ、と言い切られる。コピー説への批判と、絶対主義的な真理観への揺さぶりがここで集中する。

第7講で常識・科学・哲学の三層が比較され、第8講「プラグマティズムと宗教」で、宗教的信仰も生にとって良き結果を生むなら正当な選択肢として認められると論じられる。理論的に決着しない多元的世界のなかで、信ずる権利を擁護する温かい結論で講演は閉じられる。

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