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ポスト構造主義

固定的な構造や意味の安定性を疑う思想

認識論脱構築権力

この思想とは

構造主義が前提とした安定的構造・二項対立・固定的意味を批判的に解体する思想潮流。

【生まれた背景】

1960年代のフランスで、ソシュール言語学やレヴィ=ストロースの構造主義が知的主流となった後、その限界を内在的に批判する形で登場。68年五月革命の反権威的気風とも共鳴した。

【主張の内容】

デリダの「脱構築」は、西洋形而上学が音声・現前・ロゴスを特権化する「ロゴス中心主義」を批判し、テクストの意味は一義的に確定できず「差延」(差異と遅延)を含むとした。フーコーは知と権力の不可分な関係を暴き、「真理」が権力装置によって生産されることを『監獄の誕生』『性の歴史』などで示した。ドゥルーズは同一性ではなく差異そのものを肯定する哲学を展開し、リゾーム的思考を提唱した。固定的なアイデンティティや普遍的真理への懐疑が特徴。

【日常での例】

「常識の裏にある権力関係に目を向ける」「当たり前を疑う」姿勢はポスト構造主義的。

【批判と限界】

相対主義・虚無主義に陥るとの批判、政治的立場の不明確さが指摘される。

さらに深く

【思想の深層】

ポスト構造主義の共通テーマは「意味の安定性、同一性、現前性への懐疑」にある。デリダの「脱構築」は解体・破壊ではなく、テクストの内部で机上の安定性を支える前提、すなわち二項対立(現前/不在・声/文字・理性/感情)の階層化—を丁寧に解きほぐす作業である。ロゴス中心主義(意味の根拠を声・現前・ロゴスに置く傾向)を脱構築することで、意味が常に「差延(différance)」(差異と遅延)を含むことを示す。フーコーの「考古学」と「系譜学」は、われわれが当然視する「真理」「正常」「主体」などの概念が、特定の歴史的・制度的文脈で構成されたことを暴く。精神病院・刑務所・診療所の分析は、人道的に見える制度が実は規律と監視の権力装置であることを示した。ドゥルーズの「差異と反復」は同一性ではなく差異そのものを存在の根本原理として肯定する。

【歴史的展開】

1966年のジョンズ・ホプキンス大学シンポジウム(デリダ「人間科学における構造・記号・遊戯」)が構造主義との決別の象徴的瞬間とされる。フランスの68年五月革命の反権威的気風がポスト構造主義の文化的土壌を形成した。1970〜80年代を通じてデリダ・フーコー・ドゥルーズ・リオタール・ボードリヤールらが欧米アカデミズムに広く影響した。文学批評・文化研究・クィア理論・ポストコロニアル研究の方法論として定着した。

【現代社会との接点】

SNS上の言説分析(誰が何を「真実」と定義するか)、フェイクニュース問題、アイデンティティ政治における主体性の問い直しはポスト構造主義の問題意識と直結する。バトラーのジェンダー・パフォーマティヴィティ理論はLGBTQの権利運動に理論的基盤を提供した。

【さらに学ぶために】

フーコー『監獄の誕生』(田村俶訳、新潮社)は最も読みやすい入門として推薦される。デリダ『グラマトロジーについて』(足立和浩訳、現代思潮新社)は脱構築の原典。千葉雅也『現代思想入門』(講談社現代新書)は日本語での優れた入門書。

代表人物

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