全
『全知識学の基礎』
ぜんちしきがくのきそ
ヨハン・ゴットリープ・フィヒテ·近代
フィヒテの哲学体系の出発点となった主著
哲学
この著作について
ヨーハン・ゴットリープ・フィヒテがイェーナ大学教授時代に発表した主著で、カント哲学を徹底化し、ドイツ観念論の出発点を築いた体系的著作。
【内容】
本書は三つの根本命題から始まる。第一に「自我は自らを定立する」。すなわち思考する自我の自己同一性が一切の出発点である。第二に「自我は自我に対して非我を定立する」。自我は同時に、自分と区別される他なるものを立て、対立を経験する。第三に「自我のうちで、可分的な自我が可分的な非我に対立する」。ここから具体的な意識経験や実践が生起する。この三命題を土台に、理論的知識(認識の構造)と実践的知識(自由と行為)の両領域が厳密な論証形式で演繹的に展開される。活動する主体としての自我を、あらゆる哲学の基礎に据える点が画期的である。
【影響と意義】
本書はシェリングの同一哲学、ヘーゲルの弁証法、さらにはフォイエルバッハ、マルクス、サルトルの主体論にまで連なる思想的系譜の起点である。「定立・反定立・綜合」という弁証法的運動の原型もここに見出される。フッサール現象学における志向性理論にも間接的な影響を及ぼしている。
【なぜ今読むか】
AIと自動化が「主体」の位置を揺るがす現代に、「自我とは何か、どのように自己と他者を区別するのか」を根底から問う本書の議論は、自分の主体性を再確認するための思考訓練となる。