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実

『実証政治体系』

じっしょうせいじたいけい

近代

コント晩年の社会再組織論・人類教の基礎

社会思想

この著作について

1851〜54年刊。オーギュスト・コントが『実証哲学講義』の後に、社会秩序の再建を目指して書き下ろした全四巻の大著。副題は「社会学概論」。

【内容】

本書は、フランス革命以後の価値の空白を埋めるためには、形而上学でも神学でもなく「実証主義」という新しい知と倫理が必要だと主張する。第一巻で社会秩序論、第二巻で社会静学と動学、第三巻で社会動学=歴史発展、第四巻で未来社会の政治構想が展開される。産業主義的分業、女性の精神的指導者としての役割、愛他主義(altruisme)の制度化、そして科学者・産業家・女性が協働する「人類教」(Religion de l'Humanité)の構想が、コント独自の体系として提示される。

【影響と意義】

前期コントの科学主義を超え、社会倫理と宗教の役割を正面から論じたことで、デュルケーム『社会分業論』、J・S・ミル『自伝』での批判的継承、二十世紀の社会学・社会政策論に深い影を落とした。

【なぜ今読むか】

科学と倫理と共同体をどう結び直すかという問いは、現代の社会的分断のなかでも生きた課題である。

さらに深く

【内容のあらまし】

各巻の扉には、西方共和国、秩序と進歩、他者のために生きよという標語と、愛を原理とし、秩序を基礎とし、進歩を目的とするという定式が掲げられる。

序文のあとに、亡きクロティルド・ド・ヴォーへの長い献辞が続く。彼女は息を引き取る数分前、苦しむいわれもないのに苦しんでいることを覚えていてほしいと、5度繰り返したという。献辞の補遺には、彼女が生前に発表した唯一の作品、短編「リュシー」が収められる。第1巻の前半は、実証主義の根本精神、社会的な使命、民衆への効力、女性の影響、美的な適性を順に論じる予備的な論説で、その結論「人類教」は、人格の自然な優位を認めたうえで社交性を唯一の道徳原理に据え、他者のために生きることを至上の幸福とする。後半の基礎的な導入は総論、宇宙論、生物学の3章で、生物学の章は脳を18の要素に分け、人間と自由に連れ添う犬や馬は、重荷でしかなかった多くの空疎な人物よりも、よい資格で大いなる存在に副次的に加わるべきだとまで言う。

第2巻は社会静学、人間の秩序の抽象的な論である。第1章は、宗教ははじめ自然発生的で、霊感によるもの、啓示されたものを経て、ついに論証されるものになると述べる。宗教とは個人と集団の生のすべての部分がふさわしく整ったときの完全な調和だと定め、体にとっての健康にたとえる。生きている者はつねに、ますます死者に支配されるという一句も同じ章にある。所有、家族、言語などの章が続き、第7章は人間の秩序が変わりうる限界を論じる。

第3巻は社会動学、すなわち歴史哲学で、1853年2月6日から8月1日まで、6か月途切れなく書き継がれた。物神崇拝から神権政治、ギリシア、ローマ、カトリックと封建制の移行期をへて、西欧の革命までをたどる。序文の付録のロシア皇帝ニコライへの手紙は、一貫した共和主義者の哲学者が現代でもっとも絶対的な王に人類再生の体系を送ると書き出す。

第4巻は人類の未来の総合的な見取り図だ。第1章は、大いなる存在を、過去、未来、現在の存在のうち宇宙の秩序をよりよくするために自由に協力するものの総体と定める。第2章は個人、家庭、公共の礼拝を立て、「提示」から審判にもとづく「合体」まで、生涯を9つの社会的秘跡で聖別する。ただし女性は、結婚の前の1つと後の2つを免除される。暦は4週間の月を13か月並べ、人類、私的な五つの絆、宗教の三段階、女性、聖職者、実業の指導層、労働者に各月をあてる。巻末には、第1巻の献辞の相手にふたたび呼びかける「最後の祈り」と、150巻の実証主義者の文庫の一覧が置かれ、1819年から1828年までの初期の小論6篇が付録として再録される。

著者

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