『社会分業論』
しゃかいぶんぎょうろん
エミール・デュルケム·近代
社会統合を機械的連帯から有機的連帯への移行として描いた社会学古典
この著作について
エミール・デュルケム(Émile Durkheim)が1893年にパリ大学の博士論文として提出した社会学の主著(原題『De la division du travail social』)。フランス社会学の制度化の起点であり、マックス・ウェーバー『プロテスタンティズムと資本主義の精神』と並ぶ近代社会学の二大古典の一つである。
【内容】
デュルケムは、アダム・スミス以来の経済学的分業論を批判的に乗り越え、分業の社会的機能を問い直す。前近代の未発達な社会では、成員が相互に類似した仕事をし、集合的意識が強く個人を拘束する「機械的連帯」が支配的である。これに対して近代社会では、分業が高度化し、成員が互いに異なる専門的機能を果たすことで相互依存の網の目が生じる。この相互依存に基づく連帯を「有機的連帯」と呼ぶ。分業は単なる経済的効率化ではなく、社会そのものの統合原理を歴史的に変容させる。ただし分業の病理的形態(アノミー的分業・強制的分業)も詳細に分析され、個人の孤立・疎外・逸脱が、分業の適切な制度化に失敗した社会の症状として描き出される。本書末尾では、職業集団・同業組合を媒介とする新しい道徳的連帯が、近代社会の安定条件として提唱される。
【影響と意義】
本書はマリノフスキーとラドクリフ=ブラウンの機能主義人類学、パーソンズの構造機能主義、マートンの中範囲理論、ブルデューの場の理論の共通参照点となった。現代の労働社会学、組織論、プラットフォーム労働論、コミュニティ論の議論でも本書はなお引用される。
【なぜ今読むか】
リモートワーク・ギグ経済・職業集団の解体が進む時代に、分業と連帯の関係を歴史的・社会学的に考え直す補助線として、本書の視角は依然有効である。